──この作品を中小企業の経営者に読んでほしいですか。

 はい、読んでほしいですね。結論には異論がある方もいるかもしれない。でも、取材を通じて感じたのは、中小企業の方々の苦境は自分たちで自分たちのことをダメだと思い込み過ぎていること。もうひとつは、自分たちのことを客観視できないことだと思います。

 例えば、5つ悪い要素があって、そのうち2つを改善すればまだ復活の余地があるのに、全部をダメだと思っている。

 この作品が自分の会社を見直す良いきっかけになればと思っています。

次のハゲタカのテーマは
東日本大震災に

──今回の作品ではこれまでのシリーズ本編では登場しない、村尾浩一という人物が登場していて、非常に印象に残りました。

 村尾はハゲタカシリーズの『膨張前夜』という短編には登場しています。これまでのハゲタカシリーズは、悪いやつがたくさん登場することが特徴でしたが、言ってみれば規模の大きな悪でもありました。

 一方の今作では、小ずるい人、小さな悪党がたくさん登場します。村尾はその代表例ですね。

──次回の連載を楽しみにしている読者がいます。次の題材はどのようなものになるのでしょうか。

 ハゲタカシリーズの作中では08年まで時を刻んでいます。それでは、現在までの7年間で、鷲津政彦にどう動いてもらうか。

 先ほどお伝えしたように、ハゲタカシリーズは歴史小説でもあります。リーマンショック後に経済を巻き込んだ大きな出来事は何か……。やはり、東日本大震災です。

 震災から、4年以上たち原発事故の調査委員会は3つもできましたが、判然としないことも多い。それが、今なら冷静に見られるのではないかと思います。もちろん小説は某大企業のM&Aと再生を中心に展開していくのですが……。

 リーマンショックと違い、日本で起きたことですし、多くの人が知っている出来事でもある。政治の問題も絡んできます。非常に難しい題材だとは思いますが、誰かがやるべきだと感じていました。

 鷲津以外にも、芝野、(芝野の銀行時代の上司である)飯島亮介と、フルキャストでの物語になると思います。