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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ガラパゴスの元凶は
「正解が1つ」の日本の教育制度だ

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第14回】 2015年7月6日
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単なるスペシャライゼーションからは
独創性は生まれない

 「そうはいっても基礎学力が大事」という声も聞こえてきそうです。たしかにそれは正論だし、日本の文化や日本人らしさは守っていくべきです。ただし、特定の分野を極めることが美徳と考えられてきた「日本式プロフェッショナル」の考えは少し改めたほうがいいのではないでしょうか。

 かつて、日本はこの独自の考え方によるモノづくりによって世界をリードしてきました。なぜ日本がここまで強くなったかというと、例えば自動車でいうと、その誕生から世界に普及するまで80年にも及ぶ期間があったからです。この長い期間の中で、日本を含めた各国はひたすら技術革新を進め、技術を伝承してきました。私たちはこうした技術革新が利益を生む時代を生きてきたのです。

 しかし、今や技術革新だけでは、以前のように長い期間、利益を得続けることは不可能になりました。どれだけ製品の精度を高めても、あっという間にコピーされてしまうからです。

 さらに多くの分野で、先人が極めてくれた技術と生み出してくれたパーツで、十分に高品質なものがつくれる時代になっています。自動車でさえ、誰でも買えるモーターと電池を組み合わせれば簡単につくることができますし、実際にインドでは1台30万円で売られています。個々の部品を極めても社会の発展に役立つというわけではなくなったのです。

 自動車のモーターは、いくら進化しても基本的な仕組みは変わりません。では、何を変えていけばいいかというと、クルマを楽しむソフトウェアです。パーツとソフトウェアを組み合わせ、システムとしてどういう価値を生み出せるか、これが社会の役に立つかどうかの分岐点になるといえるでしょう。

 敷かれたレールの先にあるスペシャライゼーションからは、イノベーションは生まれません。イノベーションとは、ルールの中で効率性を上げていく努力のことではなく、ルールそのものを変えてしまうような独創的なアイデアの実用化のことなのです。

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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