リーダーの「強い志」が
現状を変える原動力になる

野田 3つのタイプのリーダー像についてそれぞれお伺いしましたが、すべてのタイプに共通する資質はありますか?

高家 リーダーに絶対的に必要なのは「強い志」だと思います。

野田 志、いい言葉ですね。

高家 リーダーの役割は「事業を成長させる」「新しい価値を創造する」「そのために組織を変革する」など、現在の延長線上にはないことを実行することです。それには、必ずリスクも伴います。そこをあえて一歩踏み出すには、戦略に加えて、その人の根底に強い志があってこそと思います。

野田 私も高家さんと同じ考えで、別の言葉で言い換えると「自己否定の連続」こそがリーダーの必須条件じゃないかと。志は常に高いところにあり、「そこに到達したい」という思いが、自分や組織を変えていくエネルギーになります。では、なぜ高い志を持てるのかといえば、「今のままではいけない」「もっと成長をしなければいけない」という、現状に対するいい意味での否定があるからです。そうした自己否定を繰り返していくことで、個人としても組織としても成長し続けていけると思います。

高家 今、野田さんがおっしゃった自己否定って、要するに自分自身や自分が属する組織に対する危機意識とイコールですよね。普通の人にはまだ見えていない時から、自分だけが感じる危機意識ってこの対談の前半でも話題に上がりましたが、リーダーシップを語るうえではやはり核となるキーワードになりますね。

全人格的要素は
経営経験を重ねた末に獲得できる能力

高家 強い志や野田さんの言う自己否定の考えって、私はその人の持って生まれた資質もある程度左右すると考えています。ですので、社内でそれを持っている人材を見極めて抜擢してあげることが、リーダー育成のためには重要だと思います。

野田 志ある人材を見抜いたあとは、どう育てるのがよいとお考えですか? たとえば、先ほど挙げていただいた一流のリーダーの3つの要素のうち、どれを優先的に身につけていけばいいですか?

高家 いちばん鍛えやすいのは、やはりプロのマネジメントスキルだと思います。野田さんの著書の中では「修羅場」という言葉が使われていますけど、一定の座学が身についていることを前提に、まずはプロジェクトや1つの事業における課題を与えて、自らの力で困難な状況を打開していく経験を積ませます。そして徐々に異なる環境やより難しい修羅場を経験させることで、プロフェッショナルスキルの実戦での使い方が磨かれていき、リーダーとしての経験則が蓄積されていくことで、器の大きいリーダーに育っていくのです。