最新・脳科学用語
「C線維カレス系システム」とは?

 皮膚には毛が生えている「有毛皮膚」と、手のひらや足の裏のように、毛のない「無毛皮膚」があります。

 有毛皮膚の最表面には自由神経終末が多数あり、軽い圧迫刺激をすると、無髄のC線維を伝わっていく活動電位が発生して、大脳皮質の島葉(とうよう)を働かして、快感を発生させる中枢、側坐核を働かせます。

「島葉」って何でしょう?
 初めて聞いた方も多いでしょう。

 脳科学の一般向けの図書には大脳皮質には、4つの葉――前頭葉、頭頂葉、側頭葉、後頭葉があるというのが通常です。

 正確には5葉あり、5番目が「島葉」で、前頭葉と頭頂葉に覆われているので、外側からは見えません。

 島葉は、情動体験を起こす感覚と関係している領域です。
「葉」は解剖学の用語で、器官を細分するときに使われ、平面で中心部が膨らんだ構造につけます。右肺臓は上葉、中葉と下葉と3葉に、左肺は上葉と下葉の2葉に分かれます。

 皮膚の軽い触覚刺激で、快感を起こすシステムを、『赤ちゃん教育――頭のいい子は歩くまでに決まる』では、「C線維カレス系(システム)」と紹介しました。

 カレス(caress)とは、自愛の感情を起こす行為のことで、キス、抱擁などです。お母さんと赤ちゃんの皮膚の接触でC線維が刺激されて、お母さんと赤ちゃんに快感が生まれ、母子の一体感が生まれます。

 赤ちゃんが不安がったり、泣いたりしているときに、皮膚をなでると、泣きやみます。「かわいい、かわいい」と言いながら皮膚をなでると、快感が発生するのです。

 なでるとき注意すべきは、最低20秒続け、快感が起こっている所見を得ること。なでる刺激のスピードは3cm/秒ぐらいで強い快感が出ます。

 これより、早くても、遅くても、快感は弱くなります。
また、刺激の温度は、体温が一番よく、それより、高くても、低くても鈍くなります。母子の有毛皮膚の接触が最善です。

 赤ちゃんをお母さんがなでているのを、見た人にも、快感が発生します。
 有毛皮膚のどの部分が、最も敏感に快感を発生させるのか。まだ完全には解明されておらず、日々研究が続いています。

 C線維カレス系(システム)のあることがはっきりしたのは2010年ごろで、専門家向けの総説(解説の論文)が出てくるようになりました。
 子育てに大いに利用してほしい感覚刺激です。