ここ数ヵ月、上海では、いわゆる個人投資家と言われる一般市民たちが、証券会社に足しげく通っている。株価ボードとにらめっこする、あの光景が復活するようになったのだ。

 株価が急落した2007年10月以来、株式投資は一般市民にとっての鬼門だった。2007年10月の6124ポイントをピークに株価は下落し、2008年10年28月には過去最低の1664ポイントにまで落ち込んだ。これにより、個人投資家は資産の多くを失った。

株価だけが上昇する中国官製バブルの時限爆弾

 あの痛手から7年以上が過ぎた。中国全土は今、株ブームの熱い空気に再び包まれている。「儲けるなら今しかない」と一般市民は株式投資に乗り換える。不動産を売却した利益をつぎ込む者もいれば、麻雀で巻き上げた資金を投じる者もいる。

 上海総合指数は過去3ヵ月で54%上昇、6月第1週には5000ポイントを越え、12日にピークとなった。「一夜にして成金」という中国固有の神話は、再び現実のものとなった。

 筆者の友人も電話口で興奮を隠さない。彼女の手持ちの株は航空銘柄が中心で、2007年以降、売るに売れない塩漬け状態が続いていた。ところが、2月以降、株価は急に上昇を始める。これ以上は上がらないだろうと見込んだ4月の時点で、ほとんどの銘柄を売却。それを軍資金に家族での悲願の訪日旅行を実現させた。

 しかし、5000ポイントを超えるとは彼女にとっては想定外だった。6月に入ってもなお上がり続ける株価に、地団太を踏んだ。

 その彼女が「今回の株価上昇は違和感がある」と訴える。「どんな銘柄でも軒並み上がっている。 “ST銘柄”さえも上昇している」というのだ。確かに、今年1~4月まで、A株に上場する二千数百と言われる銘柄のうち、下落したのは14銘柄にしかすぎない。ちなみに「ST銘柄」とは財務状況に問題があるなど、上場廃止リスクが存在する銘柄のことを指す。

 これほど中国経済が低迷しながらも、株式市場が好調だというのは奇妙な話だ。経済成長を伴いながらの株価上昇なら話もわかるが、2014年の中国の経済成長率は7.4%、今年も6.8%と落ち込みが予想される中で、確かに違和感は払拭できない。