アラブ 2015年7月6日

教えて! 尚子先生
なぜ貧困がイスラム原理主義を生むのですか?【中東・イスラム初級講座・第25回】

前回に続き、今回も「イスラム原理主義」がテーマ。アフガニスタンのタリバンに代表されるイスラム原理主義は人々に受け入れられ、ここまで広がりを見せたのでしょうか。中東研究家の尚子先生がわかりやすく解説します。

前回は「イスラム原理主義」について、この言葉が使われるようになった背景などについて説明しましたが、今回はイスラム原理主義(ここでいうイスラム原理主義とは、一般的にイスラム原理主義と呼ばれているイスラム復興運動の総称を意味しています)が、広がった要因について考えてみたいと思います。

 イスラム原理主義拡大の要因として、よく挙げられているのものには、貧困、貧富の格差の拡大、若者の失業、社会的疎外、政治的腐敗、民主主義の欠落などがあります。おそらく、最もイスラム原理主義の裾野を広げたのは、貧困、格差の拡大、若者の失業などの経済的要因だと考えられています。

 もちろん、経済的要因だけでないことは、イスラム原理主義が西欧諸国に住む若者や、産油国などの豊かな中東の国でも拡大していることからも明らかです。ですが、それについては次回の「アルカイダとは何ですか?」に譲り、今回は経済的要因に焦点をあてて説明したいと思います。

アルガニスタンのタリバンに見る、貧困とイスラム原理主義

 貧困がイスラム原理主義を拡大させた事例としてよく知られているのは、アフガニスタンのタリバンのなりたちでしょう。そもそもタリバンとは、アラビア語のターリブ(学生)を意味しており(アフガニスタンの主要言語のひとつであるパシュトー語でもターリブ)、神学校の生徒たちを指しています。

 就学率の低いアフガニスタンの神学校では、教育はもちろんのこと、寄宿舎や食事も無償で提供されている場合が多いため、信心深い家庭の子どもたちだけでなく貧しい家庭の子どもたちも、政府に提供された公立学校ではなく、神学校に通っていました。こうした神学校は通常、モスクに併設されていました。イスラムの歴史の中では伝統的な教育のスタイルです。その神学校の一つが、現在のタリバンに発展していったというわけです。

 イスラム原理主義というと、タリバンのように、現在では「テロ」というイメージが強烈です。けれども、たとえばイスラム原理主義の代表格ともいえる、エジプトのムスリム同胞団(1928年~)が民衆から支持を集めているのは、彼らがモスクのネットワークを生かし、幼稚園や学校、病院、スポーツクラブの運営、貧困家庭への金銭的支援など、草の根の慈善活動を行なっているためだといわれています。

観光客の賑わい=パルミラ, シリア【撮影/安田匡範】

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