6月4日の衆議院憲法審査会で、早大教授の長谷部恭男らと共に特別委員会で審議中の安保法案は憲法違反だと断じた慶大名誉教授の小林節の発言が波紋を呼んだのは、その卓抜な比喩のせいもあった。たとえば、戦争への協力を銀行強盗を手伝うことになぞらえて、小林はこう皮肉ったのである。

「(他国との武力行使は)一体化そのもの。長谷部先生が銀行強盗して、僕が車で送迎すれば、一緒に強盗したことになる」

 その前に小林は、安保法案の本質について「国際法上の戦争に参加することになる以上は戦争法だ」と批判し、平和安全法制と名づけた安倍晋三首相や政府の姿勢を「平和だ、安全だ、レッテル貼りだ、失礼だと言う方が失礼だ」と斬り捨てた。

憲法のイロハも知らない自民党の御用評論家

 小林は改憲論者であり、私は護憲論者だが、安倍的“壊憲”論に危機感を深くしていることでは一致しており、最近とくに交友を深めている。

 6月12日には神田駿河台の連合会館で「安倍“壊憲”政治をストップする!」という集会を開き、私と対談してもらった。

 名うての改憲派の山崎拓(自民党元副総裁)と小林が、それぞれ、早野透(桜美林大教授)と私を相手に「安倍晋三の大暴走に猛抗議する」というキャッチフレーズの下にである。

 主催は土井たか子や落合恵子と共に私がつくった「憲法行脚の会」。

 ここに小林の「自民党改憲草案集中講義」というパンフレットがある。『日刊ゲンダイ』の連載をまとめたもので、かつて小林は自民党のブレーンだっただけに非常に説得力がある。

 まず、自民党の改憲案は、要するに明治憲法に戻ろうとする「時代錯誤」の一語に尽きると批判する小林は、そもそも権力担当者を縛るのが憲法なのに、国民全体を縛ろうとする憲法観が大間違いだとし、まさに「大日本帝国の復活」を望む自民党の憲法マニア議員たちには「自分たち権力者が憲法を使って民衆をしつける」という姿勢が見え隠れすると指摘する。