コストが高くとも
自分たちが作りたい商品

 ポリ乳酸と呼ばれる環境に優しい生分解性樹脂。ファインはこの素材を使用した歯ブラシで推定90%以上の国内シェアを持つ。2008年6月には竹繊維をブレンドした新商品も発売した。

 ファインは歯ブラシ、衛生用品、介護用品などのメーカーである。主力の歯ブラシでは、成人用のほか、ハンドル部分が円形の幼児用歯ブラシ、キャラクター入りなど、さまざまな商品を手がける。なかでも注目されるのが、ポリ乳酸など生分解性樹脂を使ったエコ歯ブラシだ。

 ポリ乳酸とは、トウモロコシのデンプンなどを発酵させて乳酸を取り出し、乳酸の分子を結合して作る樹脂。使用時では普通の樹脂と同じ機能を持ち、使用後に土に埋めると、微生物によってCO2(二酸化炭素)と水に分解される。原料に石油を使わず、植物由来のため燃やしてもCO2が増加しない、環境に優しい素材である。

 同社が初めて生分解性樹脂の歯ブラシを発売したのは1998年。それまでエコ歯ブラシとしてはヘッド交換式の商品が知られていたが、通常のプラスチックに替えてハンドル全体に天然素材を採用したのは、樹脂と紙を混合した同社の「エコット」という商品が最初である。2000年にはポリ乳酸を使用した「エパック:21」シリーズを発売した。  

 商品誕生からすでに10年近く経過するが、いまだに生分解性歯ブラシの分野では、同社の孤軍奮闘状態が続く。同業他社が商品化に踏み切れない大きな理由は製造コスト。ひところよりも安くなったとはいえ、生分解性樹脂の原価は現在でも普通のプラスチックに比べると3~5倍と高価だ。しかも歯ブラシという商品の性格上、価格に大きく転嫁することが難しいためである。

 これに対し、人と環境に優しい商品にあくまでもこだわるのが同社のポリシーだ。「製造コストが高いぶんだけ利益は少なくなりますが、そこは割り切って、自分たちの作りたい商品を作ることに決めたのです」と清水和惠社長は語る。