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新聞・週刊誌「三面記事」を読み解く

マスコミを懲らしめたい政治家とメディアの呆れた応酬(下)

降旗 学 [ノンフィクションライター]
【第120回】 2015年7月4日
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>>(上)より続く

 政策無し精神論だけ議員の長尾敬氏(比例近畿ブロック)が精神論だけで発言すると、作家の百田尚樹氏が応えた。今年二月に退任するまでNHK経営委員を務め、昨年の東京都知事選での演説では、他の候補者を「人間のクズみたいなやつ」と罵ったことでも知られている。でもいちばん知られているのは、故やしきたかじん未亡人の物語を綴った『殉愛』が疑問だらけで裁判沙汰になったことですかね。ミリオンセラーを記録した『永遠の0』『海賊になった男』の著者でもあり、ご存じ、安倍ちゃんの盟友だ。

 〈沖縄の二つの新聞はつぶさないといけない。沖縄のどこかの島が中国に乗っ取られたら目を覚ますはずだ〉

 〈もともと普天間基地は田んぼの中にあった。周りには何もない。民家はあったが、田んぼの中にあった。基地の周りに行けば商売になるということで、何十年もかけて基地の周りに住みだして。一九七〇年くらいの普天間基地の航空写真があるが、基地の周りは田んぼだらけだ。そこを選んで住んだのは誰やねん、と言いたくなるんですけども〉

 〈基地の地主が六本木ヒルズの住む大金持ちなんですよ〉

 〈沖縄の米兵がレイプ事件を犯したことがある。過去何例もある。けれども、沖縄県に住む米兵が犯したよりも沖縄県民自身が起こしたレイプ犯罪のほうがはるかに率が高い。こういうことは絶対に言わないですね〉

 〈左翼の煽動に立ち向かう言語とデータを持って対抗しないといけない〉

 一連の発言はいずれもオーマイガァッで、名指しで批判された沖縄の二紙はもちろんのこと、沖縄県民までもを激怒させた。百田氏はNHKのときも都知事選のときも『殉愛』のときもやっちまっているのだが、彼の言動をたった一言で言い表しているツイートを見つけたので紹介したいと思う。

 〈こいつの学習能力は永遠のゼロか〉

 思わず噴き出してしまったが、この短いセンテンスに百田氏の全てが収斂されているように思うのは私だけか。

 メディアは百田叩きを始めた。百田嫌いで有名な朝日新聞と毎日新聞は、百田よ、よくぞ言ってくれたとばかりに百田発言を取り上げ、沖縄からの怒りを報じた。問題視すべきは政治家の発言のほうなのに、北京とソウルの次に沖縄が好きな新聞社は、百田氏をターゲットにした。その背景には、百田氏のこんな発言もあったからではないだろうか。講演での冒頭の一言だ。

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降旗 学[ノンフィクションライター]

ふりはた・まなぶ/1964年、新潟県生まれ。'87年、神奈川大学法学部卒。英国アストン大学留学。'96年、小学館ノンフィクション大賞・優秀賞を受賞。主な著書に『残酷な楽園』(小学館)、『敵手』(講談社)、『世界は仕事で満ちている』(日経BP社)他。


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三面記事は、社会の出来事を写し出す鏡のような空間であり、いつ私たちに起きてもおかしくはない事件、問題が取り上げられる。煩瑣なトピックとゴシップで紙面が埋まったことから、かつては格下に扱われていた三面記事も、いまでは社会面と呼ばれ、総合面にはない切り口で綴られるようになった。私たちの日常に近い三面記事を読み解くことで、私たちの生活と未来を考える。

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