会社を不正行為から守る

――日本企業がコーポレートガバナンスを推し進める上で、特に気を付けるべき点は何でしょうか。

バイロン それは、サプライヤーと特別な関係を持つといった従業員の不正行為です。そうした不正が発覚し、もしメディアで大きく報道されることになれば、企業価値は著しく損なわれてしまう。グローバル化が進み、文化も仕組みも違う国々とビジネスをするようになれば、そうしたリスクはより大きくなる可能性があります。だからこそ、リスクを最小限に抑える必要があるのです。

 従業員に対する教育はもちろん重要です。しかし最も効果的な対策は、透明性の高い支出を増やすことです。それはつまり、可能な限り「現金での支払いを排除する」ということ。例えば、クレジットカードというペイメントシステムの活用です。カードの支払いデータは誰にも操作ができませんから、効果的な不正対策になります。

 ちなみに、アメリカン・エキスプレスの法人カードを利用していただくと、ダイレクトに社員の支出が経費管理システムに反映されます。透明性が高まるだけでなく、社員は経費精算をする手間と時間を節約することができます。さらに株主に対しては、お金の流れが「見える化」されているという、安心感を与えることができるのです。

亀川 株式会社は法的な人格であり、「公」の存在です。このことに大企業も中小企業も関係ありません。公の資金を私的に流用するようなことがあれば、不正な支出となります。ところが中小企業経営者の中には、公私混同して会社の経費で家計の消費支出を賄うような事例が散見されます。それは会計不正であり、粉飾決算にもつながります。中小企業では、所有と経営の一致により、無意識のうちに不正な会計処理が行われる事例があるようです。

 コーポレートガバナンスというと、大企業のものと思われがちですが、実はこの中小企業にこそ、コーポレートガバナンスが必要だと思っています。オーナー経営者による自己統治です。公私を明確に分け、経営情報をガラス張りする。そしてそれを従業員にも公開し、従業員が経営に参加できるような環境を作る。そうした「良い経営」をすれば、規模に関係なく魅力的な会社になれるはずです。学生たちも魅力的な就職先として中小企業を選ぶようになるでしょう。日本の経済は中小企業で支えられているのですから、ぜひ良い経営を実行していただきたい。

バイロン コーポレートガバナンスを浸透させるためには、時には企業風土や文化を大きく変えなければならないようなこともあります。その道は決して平坦なものではありません。その意味でコーポレートガバナンスは、いわば「長い旅路」のようなもの。しかし、一歩一歩シンプルな方法でガバナンスを高めていけば、目指す目的地にきっとたどり着けるはずです。私たちアメリカン・エキスプレスは、その旅路を「数字」という部分でサポートしたいと思っています。

亀川 バイロンさんがおっしゃるとおり、コーポレートガバナンスは一朝一夕でできるものではありません。今世界中の国が会社法を改正しているのも、「世界に通用するより良い経営とは何か」を模索し続けている証拠でもあります。「これで完成」というコーポレートガバナンスはありません。新しいビジネスが立ち上がれば、それに合わせた新しいガバナンスも必要になる。コーポレートガバナンスは時代とともに「進化」し、私たちは常に「あるべき仕組みは何なのか」を自分自身に問い続けていくのです。

 


【お知らせ】
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