そこに、瀬戸が様子を見に、会議室に戻ってきた。

「順調に進んでいるかい」

「はい。チェックポイントが機能すれば、不良品の発生原因も特定されると思います。あとはそれを直せばいいのではないかと思います」

「それで、現時点での改善のための仮説は何かね?

「仮説……ですか?」

「そうだ。やみくもにすべての問題点をさらっても、時間がかかって効率が悪い。限られた情報の中で改善点の仮説を出して、それを検証するほうが早道なんだ

「そう言えば、チューブとプレートの組立作業の熟練度が不足しているのかもしれません。生産ラインを見たとき、その2つの工程は何だか作業がぎこちなく感じました。その2つはチェックポイントに含まれています」

 健太が答えると、瀬戸は含みを持たせるように返した。

「なるほど。それでわかる原因は、まだ本質的な問題に到達するための通過点かもしれないな

「伯父様、どういうこと? 一度問題が特定できれば、あとは解決策を考えるだけじゃないかしら」

「まずは、チェックポイントの結果を見てみるといい。先ほどのミーティングで、もう1人参加者が必要だったことがわかるから」

 健太と麻理は顔を見合わせて納得がいかない素振りを見せたが、その言葉を黙って受け止めた。2人とも〈確かに問題がそんなに単純であれば、もっと早く解決できたに違いない〉という漠然とした不安を感じ始めていた。

(毎週火曜日と金曜日に更新。次回は7月17日更新予定)