サブプライムショックに続く世界的な経済危機の煽りを受け、過剰流動性を背景に巨額の投資を行なって来たヘッジファンド勢は、現在なりを潜めている。

 しかし直近では、にわかに広まり始めた「景気底入れ観測」によって株価や商品価格が再び堅調な動きを始めたこともあり、「彼らの一部が本格的にマーケットに戻り始めたのではないか」と囁く関係者も多い。

 現時点では「期待先行感が強い」と見られるものの、今後本格的に投資ブームが盛り上がれば、ヘッジファンドが投資家から預かる資産額は再び増え始めるだろう。

 しかしそんな期待感が盛り上がっているときこそ、投資家は運用先選びに慎重になるべきだ。第1回コラムで紹介したとおり、外から運用実態が見えにくいヘッジファンドには、「金融犯罪のターゲットになり易い」というリスクがあるためだ。

なぜ機関投資家まで騙されたか?
投資サギの“闇のスキーム”とは

 その象徴的なケースが、第1回目で詳しく説明した「マドフ事件」である。これは、「2008年、元NASDAQ証券取引所の会長であり、高名な慈善家として信頼されていたバーナード・マドフが、巧妙な「ネズミ講投資スキーム」により、約4800人の投資家に対して、約6480億ドル(約64.8兆円)という巨額の損失を与えた事件だ。「歴史上最大の架空投資サギ」として、投資家の脳裏に深く焼き付いている。

 一般投資家だけではなく、金融のプロである機関投資家までもが、いったい何故このような「架空投資サギ」に巻き込まれてしまったのか?

 今回は、投資家が金融犯罪に巻き込まれる原因と対策について、詳しく分析してみよう。

 この分析と対策は、主に「カウンターパーティ・リスク」「商品リスク」「チャネル・リスク」の3点において行なう、金融犯罪から身を守るための基本的なアプローチである。

 まず、「カウンターパーティリスク」(取り引き先の事情により損害を被るリスク)による分析によると、多くの投資家は、「バーナード・マドフは政治家や政府高官との関係が強く、慈善活動組織にも深く関与していた優良人物」としてマドフを信頼していた。

 したがって、投資家にとってカウンターパーティとなるマドフ・ファンドは、「優良な取引相手」と評価されていたとされる。