翌日、麻理は早速、クランクケースのメイク・オア・バイの収益シミュレーションに取りかかった。その間に健太は、本社向けの経過報告書を書いていた。

 さすが会計のバックグラウンドを持っている麻理は、健太が報告書を書き上げる前に、その分析作業を終えた。

「健太さん、このシミュレーションを見てくれる?」

「現在のクランクケースの製造価格は200元(約3400円)ほどだけど、仮に社外のサプライヤーから1割安く調達できれば、設備の残存価格を3年の分割払いで売却してもメリットがあるというわけか」

「サプライヤーにとっても、手の届かなかった生産設備が購入できるとビジネスが広がるから、メリットはあるわ」

「よし、これをスティーブとチョウさんに報告しよう」

 2人はチョウのオフィスを訪問し、概要を説明した後、チョウと一緒にスティーブのオフィスに向かった。健太と麻理は、まずモーターとシェルの外部調達について説明し、次に生産設備の売却を含めたクランクケースのアウトソースについても、シミュレーションを用いながら検討の必要性を強調した。これらのアイディアにスティーブの反応も前向きだった。彼は3人に向かって、ウェイと一緒にサプライヤー候補を特定するように指示を出した。

 ついに主要なメイク・オア・バイが動き始めた。

(毎週火曜日と金曜日に更新。次回は7月28日更新予定)