ポイント制度強化に取り組まざるをえないのだろう――。

 大手家電量販店幹部は、業界5位のコジマがポイント制強化の方針を打ち出したことをこう解説する。コジマは強化の目的を、顧客に還元する方法を多様化するためとしているが、実情は厳しい。

 同社は前期、業界で唯一の減収減益、今期の第1四半期決算の売上高は前年同期比6.8%減。ポイント制強化で少しでも店舗競争力を上げ、売上高を上げたいというのが真相だろう。

 ポイント制とは、商品買い上げ時にポイントが発行され、顧客は「1ポイントにつき1円」が次回の買い物の際に割引に使える。薄型テレビや冷蔵庫など全商品の約8割に1000~4万ポイントを発行。

  ポイント制強化で集客に成功している業界首位のヤマダ電機や都市型量販店のヨドバシカメラ、ビックカメラに追随するかたちだ。こだわってきた現金値引きは継続するが、事実上の方針転換といえる。

 ポイントを発行した場合、ポイント発行額とその使用率によって算出された額を販売管理費に計上する。そのため同社は今回の方針転換で販管費は上昇するが、店頭での現金値引き幅を縮小させ売上高を上昇させることで、販管費率は期初計画どおりの18.7~18.8%に抑えられるという。

 しかし、このポイント制は「デリケートで繊細なもの」(大手家電量販店幹部)だ。現金値引きとポイント発行のバランスを誤れば、売上高の伸び以上に販管費が増大することになり一気に収益を圧迫する。

  ポイント制の先駆者である都市型量販店各社は、毎日のようにポイント発行額と売上高をチェックし、「長年の経験とデータの蓄積」(同)によって調整している。コジマにその運用ができるのか疑問を投げかける業界幹部は多い。

 また「理論上、ポイント発行するぶんは現金値引き幅を縮小するが、思惑どおりコントロールできないのではないか」(証券アナリスト)との指摘もある。価格競争は激しさを増しており、顧客は数店舗のなかから少しでも商品価格が安く、ポイント発行の多い店を選ぶからだ。

 現金値引きに魅力を感じてコジマに来店してきた顧客も多いだろう。ポイントを発行されても現金値引き幅の縮小が感じられれば、顧客は魅力を感じなくなり他社に流れていく可能性もある。

 競争上必要との判断ではあるが、難しい舵取りを強いられるのは間違いない。

(『週刊ダイヤモンド』編集部 片田江康男 )