前回までに計25回のコラムを書き上げてきた。これらのコラムに共通して「書かれていない」ことに気づいた読者はいるだろうか。「ある」ものではなく、現場に「ない」ものを問うのであるから、サスペンスものの極みである。

 答えは至って簡単、株式投資に関連した経営指標を示してこなかったのである。具体的には、PER(株価収益率)という指標だ。

 本コラムは上場企業の経営分析を扱っていながら、実は意図的に、株価にまつわる話題を避けてきた。将来の株価が上がるか下がるかは「ビミョ~な問題」だからである。

 仄聞によれば、かつて株式に係る情報誌などに寄稿する執筆者は、原稿を書いている時点で対象となる株に仕込みを入れ、雑誌が発売された直後に売り抜ける、という蛮行を繰り返したそうだ。

 現在はどういう情報管理が行なわれているのかは知らない。株式市場に対する監視の目も厳しくなったので、甘い汁は蒸発したものと考えていいだろう。

 「瓜田に履を納れず」の故事に倣い、このまま株価の話題を避け続けても構わないのだが、ここ数年にわたるPERの迷走ぶりには看過できないものがある。そこで今回は、話題の絶えない自動車業界を取り上げながら、業績悪化により株価指標として崩壊したともいわれるPERの復権を図ってみたい。

ここ数年の不況により
株価指標が軒並み悪化

 景気がよくて企業業績が一本調子で伸びている「平時」であれば、経営指標も安定した数値を示し、その意味を深く詮索する必要はない。ところがここ数年、PERは「-」の連続であり、ROEには▲印がつきまとう。

 デイトレーダーにはPERなどどうでもいい指標なのだろうが、中長期の投資を中心に扱う機関投資家などからは「どうしたものか」という話をよく聞く。この問題について、意外や、コスト管理の分野から解決策を見出してみることにしよう。

 まずは、株価指標の代表選手であるROEを復習する。これは第15回コラム(REIT不動産投資信託編)ですでに紹介した。

 〔式 1〕によって求めたROEは“Return On Equity”の略称である。『日経会社情報』は「自己資本利益率」と訳しているのに対し、『会社四季報』が「株主持分利益率」と称しているのは、対抗意識の現われか。