中国の政府系ファンドである中国投資有限責任公司(CIC)がAIG傘下の生命保険会社、米アリコの株式を最大49%取得することが注目されている。すでにCICは米モルガン・スタンレーに50億米ドル、持ち株比率9.9%を出資しているが、中国は金融危機をマイナスではなく、米国への投資のチャンスととらえている。

 対外投資が急増する背景には、オバマ氏が大統領に選ばれたことがある。次期政権で人民元切り上げ圧力が高まることを懸念し、外貨準備高を減少させたい、その一環だと考えられる。今後、ますます中国企業は世界市場に本格的に進出していくだろう。中国企業による欧米企業の買収や合弁が進めば、今度は、高い技術を持っている日本企業に対する買収が増えていくことが予想される。

 中国の産業構造が輸出依存型であるのは日本と同じだが、日本よりも中国のほうが、国内市場拡大への期待値は高い。特に、今後成長が見込める分野として、内外の企業が注目しているのが環境ビジネスである。

旧式発電所の公害削減で
成功したチャイナボーチー

 中国系企業チャイナボーチーが東証一部に上場したことは、記憶に新しいと思う。「チャイナボーチー(チャイナ・ボーチー・エンバイロメンタル・ソリューションズ・テクノロジー・ホールディング・カンパニー・リミテッド(中国博奇)」が東証に上場したのは2007年8月8日、公開価格は16万円、初値は27万6000円。売買単位は1株である。

 しかし、株式銘柄としての認知はあっても、その企業概要を知っている人は少ない。この会社は中国の排煙脱硫、脱硝など環境保護ソリューションを行っており、石炭を燃料とする火力発電に排煙脱硫・脱硝システムおよび水処理システムの設置をしている。つまり、中国の環境問題の最大のテーマである旧式火力発電所の問題解決に関わっているのである。

 中国が二酸化硫黄(SO2)の排出量で世界最大となっている最大の原因は、石炭から電力をつくる火力発電所がいまだに多数存在することにある。日本でも昭和30~40年代に、発電所や工場で大量に石油や石炭を燃やしたことで、大気汚染が一気に進んだ。

 二酸化硫黄などの硫黄酸化物(SOx)は、石炭など硫黄分が含まれる化石燃料が燃焼するときに発生する。SOxは大気中で硫酸に変わり、これが酸性雨の原因であるといわれている。旧式の火力発電所から排出されるこうした公害が、今中国では大問題になっている。