「コツコツと頑張れば出世したり、会社に留まって幸せになれたり、認められたりする社会ではないんだなと思うんです」

 こう明かすのは、地方都市に住む40代女性のA子さん。

 以前、社員として勤めていた会社で、上司のBさんからパワハラを受け、退職に追い込まれた。以来、5年以上にわたって仕事に就くことができず、実家で両親と暮らしながら、不安に脅える日々だという。

仕事は丸投げ、出張で豪遊も
資産家息子のパワハラ上司

部下を無理やりクビにした<br />パワハラ上司が議員に当選する皮肉な現実上司のパワハラが引きこもりのきっかけになるケースは少なくない
※写真はイメージです

 A子さんは職場にいたとき、総務セクションで仕事をしていた。

 しかし、それまでの直属の上司に代わり、新たな上司となったBさんは、仕事のしかたが前任者とは180度違うものだった。

 例えば、Bさんは、前任者が当たり前のように手伝っていた、全員で行う清掃やゴミ捨て、草むしりといった用務員的な仕事を一切やらなかった。

 当時30歳くらいと若かったBさんは元々、その地域でも有数の資産家の息子だった。

 家系は、役人一家。一帯の土地も持っている。

「会社は家と同じだ」

 そうBさんは口にして、くつろいだ様子だったという。

 また、前任者は出張経費を節減するため、必要最小限の会議以外、欠席していた。しかし、Bさんは、都会で行われる会議にだけはすべて出席。国内や海外の視察にも好んで出かけていって、出張手当や小遣いなどを受け取る。その一方で、視察の報告などが職場内で共有されることは、まったくなかった。

 クライアントからの評判も悪く、「Bさんが言ったことをやってくれない」などのクレームが来て、A子さんらがこっそり謝罪に行ったこともあった。

 何よりも致命的だったのは、Bさんに代わってから、顧客を怒らせて解約させてしまう事態が相次ぎ、顧客の数はおよそ2割も減ったことだ。

 さらに、業者に仕事を発注する際、打ち合わせは行うものの、業務は事実上、丸投げ状態。仕事よりも、自らのプライベートを常に優先させていたという。