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元金融庁長官が語る
日本でIFRS適用企業が急増する理由

佐藤隆文・IFRS財団トラスティ

 さらに、IFRS適用を決定した企業、もしくは予定している企業、目標としている企業も含めると計109社(同147兆円)で、時価総額は全上場企業の約4分の1になります。任意適用開始当初は、製薬や商社を中心とする業種に限られていましたが、現在は業種の幅も広がっています。

IFRS適用に向けて
企業を後押しする環境を整備

――日本の会計基準設定主体である企業会計基準委員会(ASBJ)は、日本版のIFRSとされる「修正国際基準」(JMIS)をまとめ、来年3月期以降の利用が可能になります。

 JMISを日本版IFRSと呼ぶのは必ずしも正確でないと思います。JMISには、IFRSに対し日本企業から修正を求める意見が強かった、(1)のれんの償却、(2)その他包括利益のリサイクリング――の2項目について、日本の会計基準の考え方を世界に対して発信していく、という意味があります。

 国際会計基準審議会(IASB)が設定するピュアなIFRSの適用が広まる中で、あえてJMISを公表するのは、世界100ヵ国を超える国々が採用し、常に進化を続ける国際的な会計基準に対して、日本もそのプロセスに積極的に参画するという意思表示です。

 日本人は、基準設定主体であるIASBのメンバーに1人、母体機関であるIFRS財団に私を含め2人が入り、さらにIFRS財団の唯一の海外オフィスである「アジア・オセアニア・オフィス」が東京・大手町に開設されているなど、日本として一定のプレゼンスを保っています。

――IFRSに対して、取引所はどのようなスタンスをとっているのでしょう。

 取引所の使命は、第一に、上場企業に企業価値を持続的に高める質の高い経営をしてもらうよう促すとともに、必要な資金調達の機会を提供すること。第二に、投資家に利便性の高い取引機会を提供すると共に、上場企業の業績が一貫性のある形でタイムリーに開示されることを通じ、合理的投資判断の環境を整えること。そして第三に、両者が出会う取引所市場での株価形成を通じて、日本経済全体の価格発見機能を提供すること、の3点と考えています。この使命に照らしても、グローバルに通用する質の高い会計基準は、取引所市場にとって重要なインフラの1つなのです。

 そのために、東京証券取引を含む日本取引所グループ(JPX)では、昨年1月から算出を始めた新指数「JPX日経インデックス400」の銘柄企業の選定に際し、IFRS採用を定性的な加点要素に挙げています。インデックスに採用されることは、企業の名声を高め、パッシブ運用を行うファンドなどからの買いにもつながり、株価にも好影響を及ぼします。

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