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日本の「市場」を考える(前編)

週刊ダイヤモンド編集部
【第20回】 2008年3月21日
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 「こうなったらね、韓国で株式上場したろうと思ってるんですよ」

 知り合いの某企業経営者は怒り心頭に発している。

 以下は、この社長さんと東京証券取引所(東証)の担当者のやり取り。

東証「上場直後に業績上方修正する可能性がありますね?」
社長「ありますな」
東証「それじゃ困りますね」
社長「困る?。下方修正ならともかく、上方修正で投資家や市場に迷惑かけることはないでしょう」
東証「困るんです。上場を延期されたほうがよろしいんじゃないでしょうか」

 結局、上場延期になったという

 業績不振ならともかく、業績絶好調で上場延期になるとは、この社長さんも夢にも思わなかったに違いない。

 「世界からカネを集めてこなけりゃ、この先、日本は食えないでしょう?。東証のやってることは、あべこべですよ。アホらしくて、とてもじゃないが、やってられない」

 という一方で、韓国の証券取引所からは熱烈なアプローチがあるのだとか。

 「なんじゃこりゃ!、ですよ」

 社長さんの怒りももっともだが、東証やその背後にいる金融庁の心情も、筆者にとっては理解できなくもない。

 というのも、新興市場が荒れまくっているからだ。

 新興市場には、東証のマザーズ、ジャスダック(旧店頭市場)、札幌証券取引所のアンビシャス、名古屋証券取引所のセントレックス、大阪証券取引所のヘラクレス、福岡証券取引所のQボードの6市場がある。

 株式上場基準が大幅に緩和されたため、これら6市場には1300社を超える新興企業が相次いで上場した。

 建前では、株式上場は原則として大幅に緩和し、証券取引等監視委員会や金融庁が事後監視の目を光らせるということになっているのだが、現実は一筋縄ではいかない。

 お上の目が届かないところで、株価操作、インサイダー取引が続出し、倒産や粉飾決算も常態化。反社会的勢力とのつながりまで露呈している。市場活性化のために次々に誕生した新興市場は、いまや「国家公認の賭博場」と化しているのだ。

「羮に懲りて膾を吹く」

 とはよく言ったもので、金融庁はすっかり怖じ気づいてしまった。本来なら「ならずもの企業」の退出ルールを整備するのが筋合いなのに、いきなり新規上場の入口を閉めにかかったのだ。

 で、冒頭のような珍騒動が起こる、と。

 株価低迷の本質とは、案外こんなところにあるような気がする。金融庁による病的な締め付け、会計ビッグバン、税制など、海外からカネを招き入れるどころか、あべこべに日本の個人金融資産を海外に逃がすような要因があまりに多い。サブプライム以前の問題なのだ

 世界中の投資マネーが日本に流れ込むか、あるいは逃げるのか――東証のような「取引所」のあり方も、その一つのカギを握っているのではないか。

 世界を見渡せば、驚くほどの取引所再編が怒濤の勢いで加速している。日本はその流れから完全に取り残されている。普段、あまり注目されることのない「取引所」が抱える問題は、じつのところ深刻なのである。

(『週刊ダイヤモンド』副編集長 藤井一)

<後編に続く>

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