ナイキが「RE2PECT」で
グランプリを受賞

前回に続き、6月21日~27日、フランスのカンヌで行われた広告業界の世界最大の祭典、カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバルに参加し感じたことについてお話します。

 毎年私が特に注目しているのが、2007年に設立された「インテグレーテッド部門」です。この部門では、さまざまなメディアやマーケティングの手法を横断的、かつ統合的に活用したキャンペーンが評価されます。今年、同部門でグランプリを受賞したのは、NIKE(ナイキ)のJordan Brand(ジョーダンブランド)が昨年行った「RE2PECT」というキャンペーンです。

 Jordan Brandは、2014年限りでの現役引退を表明したニューヨーク・ヤンキースのスターであるデレク・ジーター選手のキャリアを称えるキャンペーンを実施。「帽子のつばに手をかけることで相手に敬意を表す」というジーターのアクションをテーマに、「敬意」という意味の「RESPECT」の「S」を、ジーターの背番号「2」にちなみ、「RE”2”PECT」に変えたタイトルの動画を、テレビCMやYouTube、公式サイトで公開したキャンペーンです。

 ジーター選手がバッターボックスに立つと、ライバルの投手に始まり、球場のファンやスタッフが次々と帽子に手をかけます。そしてその連鎖が球場を飛び出し、街の人々から有名アスリート、大リーグの大物OBたちが次々と同じアクションを起こします。

 マイケル・ジョーダン、タイガー・ウッズ、ルドルフ・ジュリアーニ・元ニューヨーク市長、映画監督のスパイク・リー、NBAニューヨーク・ニックスのカーメロ・アンソニー、ジーターの入場曲を提供しているラッパーのジェイ・Z、そして絶大な人気を誇る司会者のビリー・クリスタルの姿もあります。

 こうして、著名人、ライバルチームの選手にまでこのアクションが広がることで、ジーター選手の偉大さを表現しています。

 ナイキは、動画の他に屋外広告なども展開したことで、一連のキャンペーンにより多くの人々が参加し、街頭で帽子に手をかける一般の人々の様子がソーシャルメディアに投稿され、これがやがて、大きな社会現象となりました。