社長とエバンジェリスト、舞台上でのコンビネーション

樋口「こんな人材はIT業界を見渡してもいないんじゃないかな」ってくらい彼のプレゼンは印象深かったですね。
まず、製品と製品を全部つないで総合的なバリューを追求する、いわば「経営者の目線」で全体のシナリオが考えられていたから、社長である私にも話がすっと入ってきました。
あとは、ほんとにまるで手品師みたいに、いろんなアプリケーションを操って見せるデモンストレーションにも圧倒されました。

社長の愚直すぎる熱意を<br />陰で支える「通訳」の存在プレゼンに重要な「視線誘導」のテクニックを解説した西脇氏の新刊『プレゼンは「目線」で決まる』も売れ行きが好調。

あまりにそれが印象的だったもので、じつは僕の上司、つまりマイクロソフト インターナショナルのプレジデントであるジャン・フィリップ・クルトアにもプレゼンを見てもらうことにしたくらいです。通訳を用意してもう一度、西脇にプレゼンをしてもらったんですよ。

――それ以来、コーポレートイベントなどでもお2人でステージに立つ機会が増えましたよね。いつも見事なコンビネーションを発揮されていますが、あれはけっこう入念なネタ合わせをされているんですか?

樋口:昔はやっていましたが、いまはリハーサルしなくても大丈夫になりましたね。一つは単純に忙しくて、事前打ち合わせの時間が取れないということもあるんですが、ああいう場でのプレゼンって、あらかじめ考えすぎるよりは、実際に会場の雰囲気を目で見てから、その場でチューンナップしたほうが10倍以上効率がいいんです。

西脇:もちろん、全体のシナリオとかスライドとかの事前準備は必要で、それは私のほうで淡々と進めていくんですけど、やっぱり最後は会場の雰囲気に合わせられるかというのが決め手になることが多いですね。

その際、私には2つの仕事があります。一つは、現場の空気を見ながら、プレゼンのシナリオを土壇場でチューニングすること。一部をバッサリ削ることもありました。もう一つは、それでも樋口には「これだけは経営者としてやはり伝えたい」というこだわりのメッセージがあるので、そことの折り合いをつける作業ですね。
本番直前のごく短時間のうちに、ガーッと集中して全体の調整をつけるスキルは、かなり鍛えられました。