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齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

ポルトガル民話「ストーンスープ」の教えが、
日本の職場で役に立つ理由

齋藤ウィリアム浩幸 [内閣府本府参与]
【第15回】 2015年8月3日
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一緒にランチをしただけで
数千億円の特許出願が!?

 そういえば、「ノミニケーション」も、80年代にハーバード・ビジネス・レビューにも取り上げられるほど、日本のクリエイティビティにとって重要な要素でした。もちろん、たんに一緒に飲めばいいというわけではありませんが、お酒の席でなら、普段言えないこともソフトに言い合える。それが「失われた20年」の間に、多くの企業で「意味がないこと」と斬って捨てられてしまった。阿吽の呼吸、タテマエと本音、以心伝心などをお互いに共有している日本社会にとって、大きな損失といえるでしょう。

 逆に、こんな例もあります。MIT(マサチューセッツ工科大学)が、毎週金曜日に各分野の教授をランダムに招いてランチ会を開きました。参加費はタダですから多くの教授が参加し、同じテーブルで食事をしながらアイデアの交換が盛んに行われたようです。

 これを継続したところ、十数年間で数千億円の特許出願に結びついたそうです。こうなると、決して無償のコミュニケーション活動が意味のないこととはいえないでしょう。

「ストーンスープ」をつくるために、
自分をさらけ出すことから始めよう

 もっとも、高度経済成長期の日本には、コミュニケーションなんかなくてもうまく回っていた時代がありました。日本は移民の国ではなかったので、多様性を取り入れる必要がなかったからです。

 しかし今は、多様性を取り入れ、クリエイティビティを発揮しないと、企業も個人もグローバルな競争で生き残れない時代。機械的に仕事をこなすだけでは、文字通り、いずれ機械にその仕事が奪われてしまうのは言わずと知れたことです。

 また、今や「背中を見て育つ」というやり方では、部下も子供もついてきません。あなたは、部下に「毎日忙しそうにしているけど、そんなにやることあるの?」とか、子供には「パパは飲んでばかりだよね」なんて思われていませんか。上司にも親にも「説明責任」があることを自覚すべきです。恥をさらけ出すような本気の話し合い、深いコミュニケーションがチームや家族の信頼感とパッションを育む土壌となるのです。

 あなたも今年の夏は、「自分をさらけ出す」ことから信頼関係づくりを始めてみてはどうでしょうか。そうすることで真剣に向き合えば、企画やアイデアを進める際に、周りに協力者が現れて、おいしい「ストーンスープ」がつくれるかもしれません。そしてそれが、強いチームづくりにつながっていくことでしょう。

※ご意見・ご感想は、齋藤ウィリアム浩幸氏のツイッター @whsaito まで。

(構成/河合起季)

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齋藤ウィリアム浩幸
[内閣府本府参与]

さいとう・ウィリアム・ひろゆき
1971年ロサンゼルス生まれの日系二世。16歳でカリフォルニア大学リバーサイド校に合格。同大学ロサンゼルス校(UCLA)卒業。高校時代に起業し、指紋認証など生体認証暗号システムの開発で成功。2004年に会社をマイクロソフトに売却してからは日本に拠点を移し、ベンチャー支援のインテカーを設立。有望なスタートアップ企業を育成している。12年には、総理大臣直属の国家戦略会議で委員を拝命し、国会事故調査委員会では最高技術責任者を務めた。また13年12月より内閣府本府参与に任命されている。世界経済フォーラム(ダボス会議)「ヤング・グローバル・リーダーズ2011」選出。2015年6月より、パロアルトネットワークス合同会社副会長に就任。著書に『ザ・チーム』(日経BP社)、『その考え方は、「世界標準」ですか?』(大和書房)。


齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機

歴史的に、世界に挑むチャレンジ精神は本来、日本人が持っていた気質。しかし今の時代、日本のお家芸“ものづくり”だけでは新興国に負けるのは火を見るよりも明らかだ。成長へと反転攻勢に転じるために必要なものは何か――。それは革新的なイノベーションを起こすための「世界標準の思考」に他ならない。気鋭の起業家であり、技術者である筆者が、日本が再び世界をリードしていく道はなにかを説く。

「齋藤ウィリアム浩幸 日本の欠落、日本の勝機」

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