カルシウムの「カル」とビタミンB1の「ビー」を組み合わせ、企業名とした「カルビー」。同社はいま、1964年の「かっぱえびせん」発売、1975年のポテトチップス発売以来、3度目となる急激な成長期を迎えている。これを支える商品が「フルグラ」だ。

創業家が旗を振り経営陣を刷新
新体制下でヒット商品が続々登場

カルビー「フルグラ」の快進撃は<br />かっぱえびせん、ポテチを超えるか実は発売して20年ものあいだ、「鳴かず飛ばず」だったフルグラ。今ではラインナップも増え、ヒット商品に躍り出た

 定番商品の売り上げを元に長期間、安定した業績をあげてきたカルビー。しかし2009年に創業家がジョンソン・エンド・ジョンソン出身の敏腕・松本晃氏を会長に招聘。さらには社長にも、現場生え抜きの伊藤秀二氏を起用した。以降同社は、驚くべきスピード感で大改革を進めているのだ。

 社内改革の代表例が「オフィスダーツシステム」だろう。同社の東京・丸の内のオフィスでは、毎朝、座席が「ダーツ」で決まる。出社後にIDカードをかざし、集中したいか、コミュニケーションをとりたいかなどを選ぶと、今日の席がランダムで割り当てられる。

 ビジネスパーソンの多くは、うすうす気づいていなかっただろうか。仮に「開発部にアイデアを打診したい」などと思っても、つながりがなく言えないことがある。だが何かのきっかけで話すと、存外簡単に「いいね!」と言われたりする。同社経営陣は、そんな社内活性化策をシステム化するため、席をランダマイズしたのだ。

 また、同社は11年から直営アンテナショップ「カルビープラス」を全国展開している。ポテトには揚げたて需要があって、お土産には一般的でないフレーバーがウケる。同社はこれを戦力化した。店内でつくった「揚げたて」スナックを提供するだけでなく、お土産として、今までにないフレーバーの季節限定商品なども販売。現在も店舗数は拡大を続けている。

 しかも、この施策が結果的に新たな進化をもたらした。伊藤社長いわく「長いあいだ、甘いポテトチップスなど挑戦的な味は受け入れられなかった」らしい。だが「カルビープラス」で様々な味の商品を展開したことにより挑戦的なフレーバーが受け入れられる土壌が整った。その結果、例えば10年から冬季限定で発売している「ポテトチップス しあわせバター味」(甘いポテトチップス)が販売期間を延長するほどの人気商品になるなど、新たな市場を切り開けたのだ。

 これら「松本・伊藤改革」を象徴する商品が「フルグラ」だ。1991年の春に「フルーツグラノーラ」の名で発売されてから約20年は「鳴かず飛ばず」。だが2011年度から翌年にかけ、売り上げは30億円台から63億円へと倍増、その後、14年度までの2年間で140億円超にまで達している。