フィリピン 2015年8月21日

フィリピンでビジネスする日本人がはまる不法就労の落とし穴

フィリピン在住19年。元・フィリピン退職庁(PRA)ジャパンデスクで、現在は「退職者のためのなんでも相談所」を運営する志賀さんのフィリピンレポート。最近増えているというフィリピンでビジネスチャンスを求める日本人たち。彼らが不法就労などのトラブルに巻き込まれないための対策は?

 最近、ビジネスチャンスを求めてフィリピンに滞在する日本の若者が増えてきた。

 不動産取引、英会話学校、コールセンター、日本語学校、人材派遣など、日本の会社あるいは個人との取引を仲介したり、サービスを提供する業種だ。ビジネスにあたって会社を設立したり、個人的に活動したり、その形態はさまざまだ。

外国人は会社のオーナーになれない

 フィリピンでは外国人の活動が制限されており、ほとんどのビジネスで会社の60%の株式(マジョリティ)がフィリピン人に保有されていなければならない(土地の保有もこのようなフィリピンマジョリティの会社に限られる)。

 ちなみに小売業/レストランの場合は100%がフィリピン資本でなければならず、必然的にフィリピン人の名前を借りて営業することになる。当然のことながら代表者(社長)等はフィリピン人となり、このことが多くのトラブルを生む原因になっている。

 日本人は会社の代表者として、小売営業などでは経営者としてすら表に出ることができない。会社組織の場合は役員として経営陣の一角と占めることはできるが、小売業では被雇用者として参画するのがせいぜいだ。そんな法的制限により、日本人が裏でビジネスを切り盛りするという違法まがいの状況が発生してしまう。

 一方、会社あるいは個人として政府に登録せずにビジネス行為を行なうことは禁止されているので、不動産仲介などにおいて、個人的な活動でに利潤を得ることはできない(フィリピン人同士ではかなり一般的に行なわれているようではあるが)。ただし、個人の所有するコンドミニアムなどを賃貸する場合は、とくに登録しなくても大目に見られているようだ(賃貸料にVAT=付加価値税を課せられる可能性はある)。

特別労働許可証と外国人就労許可証

 フィリピンで仕事をする場合、6カ月以内であれば入管からSpecail Work Permit(SWP=特別労働許可証)を取得して就労できる(3カ月有効、1回に限り延長可能)。それを超える場合は、労働雇用省(DOLE)からAEP(Alien Employment Permit=外国人就労許可証)を取得する必要がある。

 これはフィリピンの会社に雇用される場合であるが、会社の経営に参画する場合も原則同じことだ。

 これらはフィリピンに滞在するためのビザ(査証)とは別物で、SWPの場合は、9a(入国ビザ/ツーリストビザ)でOKだが、AEPを取得して長期に就労する場合は9g(Pre-Arranged Employee Visa=就労ビザ)などの長期ビザの取得が前提となる。

 ただしAEP-9gは、フィリピン人では代替できない高度な技術、日本人でなければできない仕事(日本語の教師、和食の板前など)に限られ、誰でも取得できるわけではない。要は、フィリピン人の仕事を奪うような単純労働者の受け入れを防ごうという狙いだ。

 あらかじめ退職ビザ(SRRV)を持っている場合は、AEPさえ取得すれば就労することも可能だ。この場合は比較的簡単で、とくに特殊な技術、技量を持っていなくても取得できる(ただしビザの取得が35歳以上という制限がネックになる)。またAEPの前提となる雇用会社と対になっている9gは、会社を替わるとAEPだけでなく9gビザの取り直しも必要となるので大変面倒だ。

 一方、退職ビザはAEPが前提となっているわけではないので、そのまま継続されて面倒がない。そのため50歳未満の現役の方でも、フィリピンで就労ないしビジネスをするために退職ビザを取るケースが多い。

 ちなみに移民ビザに分類されるクオータビザおよび13a(婚姻ビザ)の場合は、AEPがなくても就労/ビジネスができる。

マニラの金融街 (Photo:©Alt Invest Com)

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