加藤 たしかに、安倍首相は「日本を取り戻す」と言いましたね。安倍首相と習国家主席を比較すると、その政治的バックグランドから権力基盤の固め方を含めた政治手法、そして国内政治において突出した政治的リーダーシップを発揮している点など、いろいろと似た側面を持っていると私は思います。さらに、日中共に“改革”に直面していることから、政治家として国内に向き合わなければならない環境も近いと考えています。

マグレガー 安倍首相・習主席の国内におけるリーダーシップは、たしかにとても似ていると思います。これは非常に興味深い点です。実際、私が取材で日本を訪れた際には、20年前にフィナンシャル・タイムズの特派員として日本に滞在した時よりも、首相官邸のパワーが強いと感じました。

安倍首相には
明確なジェスチャーが求められる

戦後70年、米国から考える日中関係<br />そのとき、日本のリーダーは何をすべきか加藤嘉一(かとう・よしかず)
ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員。1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)を経て、2014年6月より現職。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。

加藤 米国がアジア太平洋地域でのリバランス政策を成功させるためには、同地域で最も重要なパートナーである日本の協力が不可欠です。その一方では、中韓との間で歴史問題を抱えている安倍首相の存在や言動が、米国にとって逆に負担になってしまう、という見方もあります。

マグレガー ドイツとの比較も含め、戦後70年を迎える今年はさまざまな議論が出てくると思いますが、私は安倍首相がパブリックに、明確なジェスチャーを示すことが大切だと思います。

 何人亡くなったとか、強制ではなかったとか、議論を狭い方向に持っていき、テクニカルなものにすればするほど日本にとっては不利になります。安倍首相は明確なパブリックジェスチャーができる政治家だと私は思っています。

しかも、安倍首相は国際的にこれだけ有名ではないですか。米国の議会が上下院合同会議における安倍首相の演説を承認したのも、安倍首相という人物を重視しているからなのです。