いまだ少数派の女性管理職。横並びの会社の中では「突出」した存在だ。だからこそ、自分も周囲も「遠慮」する。女性管理職たちはどう孤独を乗り切ればいいのか。(AERA編集部・齋藤麻紀子)

乗り越えられる?女性管理職の孤独と葛藤日本の管理的職業従事者に占める女性の割合は11.3%(2014年)。約4割を占めるアメリカ、フランスなどと比べると極めて低い(モデル/向衣琴、撮影/朝日新聞出版写真部・松永卓也)

 息苦しい。もっと、のびのび仕事がしたい。

 製薬会社でMRをしていた女性(35)は営業所長になった2年前、八方ふさがりな感覚に見舞われた。社内では、結婚や出産で営業の一線を退く女性が多い。営業の現場で、女性管理職のモデルになることを期待され、男性社員より10年も早く昇格した。

 MR時代は、何度も「全社1位」の成績を残した名プレーヤーだった。ポリシーは「押すより引け」。取引先の医師たちの表情の変化すら見逃さず、必要な情報を提供した。一度取引を始めたら簡単には覆らないほど、盤石な関係を築き続けた。

 だが所長になった途端、営業所の売り上げは一気に落ちた。MR時代の「引き」の姿勢が、所長の立場では生きなかった。

 部下は全員男性。気を使って明確に指示することができない。卸業者など外部の人との交渉も必要だったが、遠慮してしまう。とうとうアポイントすら取れなくなり、商談には元上司に同行してもらうこともあった。

「このままでは、後輩の女性たちの道をつぶすことになる」

 その気負いが逆にメンバーとの関係を悪化させた。

「所長はグチを漏らしてはいけない」「ネガティブな情報はストレートに伝えないほうがいい」など、自分で作った所長像に追い込まれ、とうとう営業所の成績は全国最下位になった。

「当時は、誰とも本音で話せなかった。とにかく孤独でした」