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黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

男たちの「本音と建前」に翻弄される
悲しき女性役員

吉田典史 [ジャーナリスト]
2015年8月4日
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ある女性役員は、実績がなくともナンバー2に。社長になれず、なぜバカの男たちを支えないといけないと思うが、年収1500万円の生活は捨てられない(写真は本文と関係ありません)

 今回は、中堅企業の女性役員を取り上げたい。彼女は創業に近い時期に入社し、30代後半で早々と役員になり、12年近くが経つ。現在は40代後半。しかし、かねてからライバルと目して来た男性から追い打ちをかけられ、かつてなく立場が危うくなっている。

 役員でありながら、なぜこのような状況になってしまったのか、その理由をこの会社の周辺の関係者、社員、退職者たちから聞くと、ある状況が浮き彫りとなる。それを生み出す構造は、多くの会社に形を変えて存在し、浸透していると言える。根深い問題であり、改革することは実に難しい。

 世間では、「女性の職場進出」や「女性の役員」を称える傾向がある。一方で、女性を重用できない構造もある。ここには、ホンネとタテマエが潜んでいる。あなたの身近に、このような女性はいないだろうか。


創業者とはまるで運命共同体
社長への野望を燃やす女性役員

 社長になりたい。だけど、なることができない――。いつまで、こんなバカの男たちを支えないといけないの……。

 そんな悶々とした思いを十数年、心に秘めている女性がいる。

 岩上は、大手教材会社(正社員数450人)の取締役を務める、40代後半の女性だ。創業間もない20年ほど前、1990年代後半にこの会社に中途採用で入った。それ以前は、社員が30人にも満たない教材編集会社に数年間、勤務していた。

 岩上が大手教材会社の役員になったのが、12年ほど前。女性が役員になったのは会社設立以来、初めてだった。社長の一声で決まったという。

 当時の社長は創業者。経済雑誌に時折登場して文部科学省を批判することで物議をかもすなど、話題には事欠かない人だった。怒ったときには社員らに罵声を浴びせたり、湯のみ茶碗をぶつけたりするなど、過激な一面もあった。30代前半で早々と離婚もし、様々なスキャンダルもあった。

 社員らが次々と辞めていく中、岩上は残り続けた。20代後半でありながら、課長のような待遇を受けていた。岩上は忠実だった。一切、反論をしない。仕事を覚えるスピードは速く、事務処理などの手際もよかった。そのため社長は、岩上をそばに置いた。金融機関との折衝や顧問税理士との話し合いの場にすら、加わるようにさせた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史

 ここ10数年の間に社会環境が大きく変わり、人々のホンネとタテマエに対する価値観が揺らぎ始めている。それを具現化しているのが、今の企業の職場ではないだろうか。これまでは、ホンネとタテマエが絶妙にバランスしながら、人間関係が維持されてきた。しかし、企業社会において生き残り競争が激化し、「他人より自分」と考えるビジネスパーソンが増えるにつれ、タテマエを駆使して周囲を蹴落とそうとする社員が増えている。

 誰もが周囲を慮らなくなり、悪質なタテマエに満ち溢れた職場の行きつく先は、まさしく人外魔境。そこで働く社員たちは、原因不明の閉塞感や違和感、やるせなさに苛まれながら、迷える仔羊さながらに、次第に身心を蝕まれて行く。この連載では、そうした職場を「黒い職場」と位置づけ、筆者がここ数年間にわたって数々のビジネスパーソンを取材し、知り得たエピソードを基に教訓を問いかけたい。

「黒い職場の事件簿~タテマエばかりの人外魔境で生き残れるか? 吉田典史」

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