男たちの「本音と建前」に翻弄される<br />悲しき女性役員<br />ある女性役員は、実績がなくともナンバー2に。社長になれず、なぜバカの男たちを支えないといけないと思うが、年収1500万円の生活は捨てられない(写真は本文と関係ありません)

 今回は、中堅企業の女性役員を取り上げたい。彼女は創業に近い時期に入社し、30代後半で早々と役員になり、12年近くが経つ。現在は40代後半。しかし、かねてからライバルと目して来た男性から追い打ちをかけられ、かつてなく立場が危うくなっている。

 役員でありながら、なぜこのような状況になってしまったのか、その理由をこの会社の周辺の関係者、社員、退職者たちから聞くと、ある状況が浮き彫りとなる。それを生み出す構造は、多くの会社に形を変えて存在し、浸透していると言える。根深い問題であり、改革することは実に難しい。

 世間では、「女性の職場進出」や「女性の役員」を称える傾向がある。一方で、女性を重用できない構造もある。ここには、ホンネとタテマエが潜んでいる。あなたの身近に、このような女性はいないだろうか。


創業者とはまるで運命共同体
社長への野望を燃やす女性役員

 社長になりたい。だけど、なることができない――。いつまで、こんなバカの男たちを支えないといけないの……。

 そんな悶々とした思いを十数年、心に秘めている女性がいる。

 岩上は、大手教材会社(正社員数450人)の取締役を務める、40代後半の女性だ。創業間もない20年ほど前、1990年代後半にこの会社に中途採用で入った。それ以前は、社員が30人にも満たない教材編集会社に数年間、勤務していた。

 岩上が大手教材会社の役員になったのが、12年ほど前。女性が役員になったのは会社設立以来、初めてだった。社長の一声で決まったという。

 当時の社長は創業者。経済雑誌に時折登場して文部科学省を批判することで物議をかもすなど、話題には事欠かない人だった。怒ったときには社員らに罵声を浴びせたり、湯のみ茶碗をぶつけたりするなど、過激な一面もあった。30代前半で早々と離婚もし、様々なスキャンダルもあった。

 社員らが次々と辞めていく中、岩上は残り続けた。20代後半でありながら、課長のような待遇を受けていた。岩上は忠実だった。一切、反論をしない。仕事を覚えるスピードは速く、事務処理などの手際もよかった。そのため社長は、岩上をそばに置いた。金融機関との折衝や顧問税理士との話し合いの場にすら、加わるようにさせた。