中国の景気が停滞の様相を呈し、上海株式市場も大きく下落しています。中国はこの危機を、人民元の基軸通貨化で乗り越えようとしているようです。

 日本の経済政策を学ぶ中国は、今後、量的金融緩和などの景気対策を導入する可能性があります。その際、米ドルと同じように人民元が基軸通貨であれば、各国が人民元を保有し、さらにそれを国債で保有してもらえる可能性が高くなるため、中国としては景気変動に安定的に対応できるようになります。

 人民元が基軸通貨になるためには、まず、 IMF(International Monetary Fund:国際通貨基金)の通貨 SDR(Special Drawing Right:特別引出権)の構成通貨(現在、米ドル・ユーロ・英ポンド・日本円)に選ばれること、つまり主要な国際通貨、準基軸通貨として認められるということがとても大事なのです。

基軸通貨になることのメリット

 ここで、自国通貨が主要な国際通貨、つまり基軸通貨になると何がよいのか、考えてみましょう。まず、民間部門では、海外との取引で自国通貨が使えるということは為替変動リスクから解放され、また送金関係の手数料も少なくなるため、経営が楽になります。

 しかし、自国通貨が国際通貨・基軸通貨になってよりメリットが大きいのは、実は通貨当局(財務省と中央銀行)などの公的部門です。例えば米国では、従来、経常(貿易)赤字と財政赤字に苦しんできましたが、これを基軸通貨の効力によって埋めてきました。