超小型モビリティが解決した訪問介護の「足」の問題訪問介護先の一般住宅では駐車スペースが少ない場合が多く、軽自動車では公道にはみ出して駐車し、交通の邪魔になることが多い。ホンダの超小型モビリティ「MC-β」導入で、そうした課題を解決した Photo by Kenji Momota

 「ついに見つかった。これぞ、成功事例だ!」
 くまもと成仁病院(熊本市東区)の一室で、関係者らの話を聞きながら、そう実感した。ここに辿り着くまで、随分と長い道のりだった――。

 2010年から6年間に渡って続いている、超小型モビリティに関する実証試験。本連載では2011年5月の記事を皮切りに『超小型モビリティの可能性を辿る旅』として各地の実情をご報告し、併せて筆者自身の意見を述べてきた。熊本県が現在実施している、ホンダ「MC-β」による実証試験のキックオフ式については2014年2月の記事に詳しい。

 そうしたなか最近、全国各地から「国は法整備についてどこまで本気なのかよく分からない」、「自動車メーカー側も腰が引けているのではないか?」といった『超小型モビリティ正式誕生』に向けた不安や不信感が産学官、さらにベンチャー企業のなかから漏れ聞こえるようになってきた。

 筆者は「はじめに超小型モビリティありきという議論は不要だ。大きな変化を迎えている日本全国の地域社会、さらに自動車産業の構造変化に対して、どのような交通、移動手段がそれぞれの地域で最適かを考えるべき。その上で、重要なことは『実需の精査』である」と言い続けてきた。

 2015年7月、アメリカから中東への往復が続いた後、7月末に熊本に出向いた。熊本県・商工観光労働部・新産業振興局からの依頼を受けて講演を行った。名称は、超小型モビリティ技術普及講演会、第1回「次世代自動車の現状と地域の取組み」講演会。冒頭、振興局長の渡辺純一氏が主催者挨拶。それに続き、筆者がテーマ『熊本県で、超小型モビリティは本当に必要か!?』で75分間を担当した。

 講演の内容は、超小型モビリティに関するブレインストーミングとした。そのなかで、コンフィデンシャル案件に対する守秘義務ギリギリ、業界裏話200%満載の『10個のQ&A』を用意した。

 「軽(自動車)じゃだめなのか?」、
 「中山間地域の拡大、買い物難民の増加って本当か?」、
 「EVじゃなきゃ、だめなのか?」、
 「電動車椅子も、超小型モビリティになる?」、
 「若者のクルマ離れ、超小型モビリティが救世主になる?」、
 「高齢化社会の到来で超小型モビリティが流行るか?」、
 「自動運転になったら、超小型モビリティは一気に普及する?」、
 「カーシェアが超小型モビリティ普及を加速させるのか?」、
 「産業振興になるのか?」、
 そして最後に「熊本県に、超小型モビリティは本当に必要か?」とした。

 今回の講演、とても清々しい気持ちで行うことができた。なぜなら、同日の午前中、前述のくまもと成仁病院で超小型モビリティの「成功事例」について詳しい話を聞くことができたからだ。