今年は戦後70周年の節目の年であるので、中国メディアは数多くの戦争関連の特集記事や論評を発表している。

習政権は歴史問題をどこまで重視しているのか4月、5か月ぶりに日中首脳会談が行われた
写真:首相官邸HPより

 歴史問題は日中関係の重要な問題の一つである。中国の過去の政権は歴史問題について、日本に対して強い態度をとってきた。例えば、1998年に江沢民国家主席(当時)は訪日した際に、「日本軍国主義は中国人民に大きな災禍をもたらす侵略戦争を何度もおこした。率直に言って、多くの列強の中で中国に災禍をもたらしたのは日本である」と、日本の歴史認識を批判した。

 習近平指導部も発足後、中国と中国共産党の歴史から教訓を得る重要性を説き、過去の政権と同様に歴史問題で日本を牽制する発言をしてきた。習政権のこのような姿勢は単に日本の右派勢力を批判することだけが目的ではない。そこには多分に中国の国内要因も関係している。なぜなら、抗日戦争期の中国共産党の精神を継承することは、現在の同党の抱える課題に関わってくるからだ。

習近平主席は
歴史問題をどう語ってきたか

 習近平国家主席は就任以来、日本政治の保守化という背景もあり、歴史に関わる講話を何度か行っている。公にされているものでいうと、昨年7月7日の「七・七事変(盧溝橋事件)」77周年記念式典での講話、同年9月3日の抗日戦争勝利69周年記念座談会での講話、同年12月13日の南京大虐殺国家追悼式典での講話である。70周年の講話はまだ発表されていないので、この三つの講話が習政権の歴史に対する見方を示しているといえる。

 習主席はこれまでの政権の立場を継承しつつも、独自の見方も入れている。ここでは、習講話の全般的ポイントを簡単に紹介しておこう。

 第一に、中国の抗日戦争は民族の団結を強めたという点である。抗日戦争は当時バラバラだった中国の各勢力が協力一致して闘った戦争であり、日本に勝利したことで、長年にわたって帝国主義列強の抑圧を受けていた状況を変え、中華民族に自信を与えたという。毛沢東が日本の訪中団に対し「日本が中国の大半を占領していなければ、中国人民は覚醒することもなかったので、この一点においては、皇軍に感謝する」と語ったのは、この論理である。過去二代の政権もその立場に立っていた。