新しい日米関係を求めて――自主独立構想

 次に鳩山は、外交面で従来の自民党とは違ったユニークな方向性を打ち出した。“友愛外交”に基づく「東アジア共同体」構想だ。

 友愛外交とは、価値観の違う国々と、互いに尊重し合いながら共存共栄を図っていこうという鳩山内閣の外交方針だが、それに基づく東アジア共同体とは、日中韓で集団安全保障体制や通貨統合まで視野に入れたEU型の共同体を形成することで、東アジアにアメリカ・欧州に匹敵する第三極をつくり、それを足がかりに対米従属から徐々に脱却し、対等な日米関係を築いていこうというものだ。

 もし実現したら、日本が対米追従路線と決別するきっかけにもなりえる面白い案だ。しかも時期的に2009年という時期は、ちょうどリーマン・ショックとギリシア問題で欧米という大巨人の足元がふらつき、かわりに中国が台頭してきた時期だ。もし日本が本気でアメリカと決別したいと考えるなら、タイミング的にも絶妙と言えるだろう。

 ただしこれを実現するには、3ヵ国の間に今なお根強く残っている歴史認識の問題、そこに端を発する反日感情の問題、それから日米同盟弱体化を狙っているフシすらある中国の軍事的脅威の問題など、課題は山のようにある。

 結局、鳩山の提唱した東アジア共同体構想は、具体化の動きを示す前に鳩山が辞任してしまい、フェードアウトしてしまった。