「最新の設備に替えやすい」「メンテナンスなどの対応が不要(または容易)」――。そうしたメリットを理由に、多くの企業が利用している設備投資方法『リース』。しかし、前回まで紹介してきたIFRS(国際会計基準)導入によって、リースを利用している企業の多くが「デメリットを被るのではないか」という疑心暗鬼に陥っている。そうした現状を踏まえ、「リース」と「購入」では企業にとってどちらがメリットがあるのか、今回はその真相に迫っていきたい。

すでに始まっている!
リース会計の“IFRS化”

 上場企業へのIFRS強制適用時期といわれる2015年又は2016年に基準が大きく変わるかというと、そうではない。IFRSの強制適用を前にして、既にリース会計基準の“IFRS化”は始まっている。

 これまで税務基準寄りだった日本のリース会計基準は、国際的なリース会計基準と大きな隔たりがあると指摘され、1990年代後半から見直しが始められてきた。その後、国際会計基準へのコンバージェンス(共通化)が進み、2008年4月から始まる事業年度について、『新リース会計基準』が適用されることになった。

 この変更によって、「日本のリース会計基準は、IFRSにかなり近いものになっている。大まかには同じといってもよい」(野村直秀・アクセンチュア・エグゼクティブパートナー)ほどに変貌した。では、旧リース会計基準は新リース会計基準になることで、何が変わったのか。

所有権移転外ファイナンス・リースの
例外処理がなくなった

 変更点を説明する前に、リースの会計処理について簡単に説明しておこう。リース会計は、取引実態の違いによって「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」という2種類の処理に分けられる。

 「ファイナンス・リース」とは、(契約の中途解約が不可能)で、(リース物件の利益とコストを借り手が負う)リース取引をいう。一方の「オペレーティング・リース」は、ファイナンス・リース以外のものを指すものだ。

 「ファイナンス・リース」では、原則的に、購入した固定資産と同じようにリース資産を貸借対照表に計上し、規則的に減価償却(=「売買処理」という)を行なう必要がある。しかし「ファイナンス・リース」は、リース期間中または期間後に、実質的に借り手へリース資産が所有権移転するものと所有権移転しないものに分けられる。「所有権移転外」に関しては、例外的にリース料の支払いのみを損益計算書に計上し、貸借対照表にリース資産やリース債務を計上しない売買処理より簡便な「賃貸借処理」が認められていた。