経営 X 人事

モチベーションを高める
「給与」と「キャリア」の考え方

意欲を削ぐような
異動は強制しない

 異動の際、「君のためだ」と言って単身赴任を強いるということも、あってはならないことです。私は、単身赴任は、希望する人以外、少なくとも同意する人以外はさせるべきではないと考えています。

 単身赴任に限らず、楽しくない状態を会社がつくって、「仕事をしろ!」というのは考えられないことです。

 もちろん、「キャリアのために必要だからやってみないか」と持ちかけてもいいでしょう。しかし、「これをやれ!」と、事情に配慮することなく強制すべきではないのです。

 ちなみに、“家を建てると異動になる”という都市伝説のようなウワサがありますが、これは嘘です(笑)。たまたまそういうことが起こることはあるでしょうが、意図的にやっている企業はないでしょう。

 ただ、事前に異動を打診し、もし「ちょうど家を建てたところなんですが」と言われれば、それを無視して異動させるといったことはすべきではありません。

 つまり、事前のコミュニケーションで相手の状況を把握したうえで、適切に対応する。これは、社員のわがままを聞くという意味ではなく、本人の活力を最大限に生かすことを考えたときに、必要な対応だからです。

「お前に人事権はない!」
と言われて人事に!?

 ちなみに私は、NKKに入社して3年経った時に、「人事に行け」と言われました。

 当時、私は、人事の仕事には関心がなかったので「嫌です」と言ったら、上司に「お前に人事権はないんだ」と言われました。そんな風に言われれば、私のような会社思いの人間でも、やる気は下がります(笑)。

 ですから、人事に異動して4、5年は、嫌で嫌でしょうがなかった。そもそも人事をやりたいと思っていなかったし、仕事も上から言われたことをやっているだけで、面白くもない。

 ただ、私の場合、ある時、「自分は、人事が嫌いなのではなく、年功序列や制度でがんじがらめにするやり方が嫌いなのだ」ということに気づき、それからは、人事の本来の役割である、「人の意欲を引き出す」ということに大きな関心を持つようになりました。

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八木洋介

1955年生まれ、京都大学卒業。1980年日本鋼管(NKK、現JFEスチール)に入社。人事などを歴任し、1999年から13年間はGEに勤務。複数のビジネスにおいて日本およびアジアの人事責任者を歴任。2012年4月より現職。著書に金井壽宏氏(神戸大学教授)との共著『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社)がある。


勝つ組織をつくるための戦略人事塾

NKKやGEで人事の要職を歴任し、現在はLIXILグループで執行役および人事の責任者を担う八木洋介氏が、経営に資する「戦略部門としての人事」とは何かを解説する。

「勝つ組織をつくるための戦略人事塾」

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