経営 X 人事

モチベーションを高める
「給与」と「キャリア」の考え方

企業は、自立した
個の集団である

 つまり企業の人事もプロ野球のように、ドラフトやFA(フリーエージェント)に近いことをやるべきでしょう。本人が「何をやりたい」という宣言をし、一方、受け手側も、「ここが空いているから来てほしい」とアピールする。

 そういう形でやりたい仕事、行きたい部署を選べることが、人のやる気につながるのです。

 そうしたことが許されない企業では、会社が自ら“社畜”のような社員を生み出し、また、社員自身も社畜であることを受け入れてしまっている。

 しかし、これからの社会では、働く人が、自分のキャリアを自分で築き、それが実現できないのなら会社を出ていく、ということが当たり前になっていきます。

 ある舞台でやりたいことが実現できないのなら、舞台を替えるのは、悪いことだとは思いません。企業と従業員は、滅私奉公型の関係ではないですし、自立した個が意志を持って働く場所が企業なのです。

 ちなみに当社では、異動の希望を聞いた時、「今すぐ動きたい」という意思を示した人は、全員の話を聞き、その理由が納得のいくものであれば、100%異動させるようにしています。

 中には、単なるわがままで「今すぐ異動したい」と言う人もいますが、そうした場合は、コーチングや教育によって、わがままだと気づかせます。

 また、努力をせずにただ「評価されない」と不平を言う人の場合は、異動を希望しても、受け入れてくれる先がないので、自分に問題があることがわかるでしょう。

 本人の希望を重視する場合、人気があるポジションに希望者が集中するということが起こります。よいマネジメントをしていないマネジャーの下には、希望者が集まりません。マネジャーはよいリーダーシップを発揮することが求められるようになります。

 また希望が叶わないケースも出てきます。社員は自分の希望が叶うように切磋琢磨しなければなりません。

 働く個人は、自分がどこでどんな仕事をしたいのかをはっきり宣言し、組織の長は、どういう人に来てほしいかをはっきり言う。個が意志を持って仕事をし、それを会社が把握し、意志を持った経営につなげる。

 そうした自立した個が集まった組織をつくっていくのが、戦略人事の役割なのです。

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八木洋介

1955年生まれ、京都大学卒業。1980年日本鋼管(NKK、現JFEスチール)に入社。人事などを歴任し、1999年から13年間はGEに勤務。複数のビジネスにおいて日本およびアジアの人事責任者を歴任。2012年4月より現職。著書に金井壽宏氏(神戸大学教授)との共著『戦略人事のビジョン 制度で縛るな、ストーリーを語れ』(光文社)がある。


勝つ組織をつくるための戦略人事塾

NKKやGEで人事の要職を歴任し、現在はLIXILグループで執行役および人事の責任者を担う八木洋介氏が、経営に資する「戦略部門としての人事」とは何かを解説する。

「勝つ組織をつくるための戦略人事塾」

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