積極運用派対安全運用派?

 現在、約120兆円に及ぶ公的年金の積立金運用をどうするべきかが宙に浮いている。『日本経済新聞』は3月11日、12日の二日にわたって、上下で「迷走する年金運用」という記事を載せた。

 日経の記事の主な内容は、これまで数度にわたって開かれてきた「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)の運営のあり方に関する検討会」で「積極運用派」と「安全運用派」の意見が対立しているということと、5年に一度の改訂時期を迎えたGPIFの基本ポートフォリオと運用目標のうち、運用目標に関して長妻昭厚労大臣が事務方の案を認めず、基本ポートフォリオは、運用目標無しで、暫定的に現状維持される状態になったということだ。

 記事は、原口総務大臣を積極運用派、長妻厚労大臣を安全運用派と色分けして、有力閣僚間で方針に対立があるかのような図式で現状を報じているが、率直に言って、読者の多くは何が真の問題なのか訳が分からないだろう。

 筆者は、GPIFのあり方に関する検討会のメンバーなので、この件に関して、読者よりも少々情報が多いが、この検討会は、市場への影響を考慮して議事が非公開になっているので、議論の内容をご説明することができない。この点は不便なのだが、公的年金の運用が抱える問題点について、今の時点でポイントを指摘しないのは良くないことだと思うので、筆者が最も重要だと思う論点に絞ってご説明してみたい(注:今回説明する点以外にも、重要な論点が幾つかある)。

 尚、筆者は、検討会の議事にここまで参加してみて、議事を非公開にすることはメリットよりもデメリットの方が大きいと思う。この点は、長妻大臣も、原口大臣もそう思われるのではないかと思うが、いかがだろうか。会議の結果の採否や実行の方法は大臣以下の政府の側の裁量と判断の下にある訳だし、巨額の資金運用に関わる重要な論点は国民が広く共有する方がいい。また、もう一言、これまでのところ検討会の議論は全く不十分であり、噛み合った議論になっていないことを付記しておく。