中国で不動産のバブルが生じている。

 中国国家発展改革委員会が発表した2010年1月の全国70都市の不動産価格指数は、全国平均が前年同月に比べて9.5%上昇した。2月には、10.7%の上昇となった。

 英フィナンシャル・タイムズ紙(2010年1月7日付)によると、新築住宅の平均価格は、09年11月までの1年間に上海で68%、北京で66%、深センで51%上昇した。所得に対する住宅価格の比率で見ると、中国は現在世界で最も住宅価格の高い場所になっている。

 09年における住宅売却額は5600億ドル(約50兆4000億円)にのぼり、1年前より80%以上も増加したという。不動産ブームの中心地である上海では、地価が03年から150%以上も上昇した。北京や上海などの大都市では、面積100平方メートル前後の住宅(つまり、特別豪勢であるとは思えない住宅)が、500万元(約6500万円)以上で取引されるケースも多いそうだ。中国の1人当たりGDPは日本の10分の1以下であることを考えると、これは異常な価格であると考えざるをえない。

 中国では土地私有は禁じられているのだから、以上で見た不動産バブルは、考えてみれば奇妙な現象だ。市場で取引されているのは、土地の使用権と建物である。土地自体は、国民や企業が政府から最長70年間借りる制度である。

 先日、中国のメディアからこの件で取材を受けたので、こちらから質問して逆取材した。

 「いま買わないと、もう買えない」という都市住民の焦りは、高まっている。購入者の多くが値上がり後の転売を目的にしており、入居者のいない空室も目立っている。大都市のマンション価格は収入の20倍となり、「住宅ローンの奴隷」という言葉がはやっているのだそうだ。

金融緩和の影響が大きいため、
元安、輸出増、不動産バブルが生じる

 現在の不動産バブルは、直接的には中国の景気拡大策の影響だ。金融緩和によって住宅ローン金利を引き下げ、また不動産開発に義務付ける自己資金規制を大幅に緩めた。このため、不動産開発と住宅に対する需要が膨張したのだ。

 また、元レート固定化の影響でもある。この1年8ヵ月間、元は1ドル=6.83元で動いていない。05年7月に介入を緩和したときに元の対ドルレートが約2割上昇したことから考えても、相当規模の元売りドル買い介入を行なっていると考えられる。こうした介入は、国内の金融緩和をもたらし、国内にインフレ圧力を与える。