経済産業省のホームページにある「日本の産業を巡る現状と課題」という資料がなかなかおもしろい。

 日本の産業/企業が「なぜ技術で勝って、事業や利益で負けるのか?」「主要産業の将来像」「これからの産業政策の方向」といった興味深いテーマについてデータ付きでまとめられている。

 日系企業の収益が振るわない理由の一つとして、液晶テレビ、鉄道、原子力、水、画像診断機器といった産業分野で、プレーヤーが多数ひしめいていて、特に国内市場での競争が激烈で利潤を確保しにくいことを挙げている。この点を韓国と比較すると、自動車、鉄鋼、携帯電話、電力といった大分野で、いずれも日本のほうが市場が大きいのに、企業1社当たりの市場規模で見ると韓国のほうが大きい。つまり、韓国企業は国内市場で規模と利益を確保できているので、国際市場での競争を有利に戦うことができるという分析だ。

 さりとて、経産省が主導して、業界再編を進めるべきかというと、これは違うだろう。

 ビジネスをどう組み合わせたらいいかを官庁が適切に考えられるとは思えない。また、民間の利害に深く絡む問題に官庁が介入すべきでもない。

 日本で産業ごとのプレーヤーの絞り込みが十分行われない最大の理由は、多くの大企業の経営が株主よりも、社員共同体を基盤としていることだろう。特に、相手企業に主導権を持たれて劣位で経営統合する場合には、経営者本人ばかりでなく、自分の先輩・後輩の立場が気になるから身動きが取れない。この点に関して、株主の力は、まだ十分強くない。