部下との信頼関係の築き方で大切なことは、“身体で聞く”ことの心掛けです。

 上司からの積極的なあいさつや雑談で心を開き始めた若手は、次第に仕事の面でも臆することが減り、報告や相談を行うようになっていきます。報告や相談にはそれ自体、自分の考えを整理したり、深めたりするのに役立ちますから、若手のこうした変化は、自らが考えて行動する第一歩を踏み出したともいえます。

 こうしたとき、上司が最後まで話をきちんと聞いてあげることが、若手の励みとなり、自信につながります。たとえ、その内容が要領を得ていなくても、がまん強く聞く姿勢が重要です。

 ここで注意を払いたいのは、会話における「聞く」とは、「言葉」による言語コミュニケーションだけでは成り立っていないという点です。非言語コミュニケーション――すなわち、「表情」や「態度」「言葉の調子」なども、会話の大切なファクターとして働きます。平たくいえば、部下に「話を聞いてもらえた」という満足感をもたらし、確かな信頼関係を築くには、“身体で聞く”ことが不可欠なのです。

 もし、上司が忙しさを言い訳に、身体で聞くことをおざなりにしていると、せっかく成立しかけた信頼関係は壊れ、上司と部下の関係は振り出しに戻ってしまいます。身体で聞くとは、どんなに忙しくても、部下が上司の席へ相談や報告に来たら、彼らのほうへ身体の向きを変え、目を見てやることです。

 ただ、これが簡単なようで、なかなかできないんですね。私自身、パソコン画面を見ながらつい返事をしてしまったり、部下のほうに少し顔を向けるだけだったりして、「ちゃんと聞いてます!?」と、部下に怒られることもしょっちゅうです。

 みなさんも経験していることだと思いますが、上司は会議や出張などでどうしても不在がちです。そのため、部下からすれば、上司が席にいる今しか話し掛けるチャンスがないという気持ちになりますし、上司からすれば、溜まりに溜まったデスクワークを処理するのに追われて、部下の話を聞くことが後回しになってしまう、といった事態が起きてしまうんですね。