春は「別れの季節」と言われる。

 よくしてくれた上司が異動になったり、親しかった同僚が退職したりする。つい、センチメンタルな気分になりがちだ。

しかし、縁を切ったほうがいいと思えるような関係もある。それが無能な上司が跋扈する職場である。

連載10回目は、役員、部長、課長の3人の上司に翻弄された結果、会社に見切りをつけ、見事に意中の会社に転職を決めた女性社員を紹介しよう。

 あなたの職場にも、こういう無責任な上司がいないだろうか。

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■今回の主人公――はい上がろうとする「負け組社員」

 森田美穂(34歳・仮名)

 6年前に中途採用試験を経て、現在の医療機器製造販売会社(社員数350人)に入社。新商品を企画する開発部(部員は非管理職が8人、管理職3人)に配属される。手際よく仕事を進めることで人事評価などは高いが、無責任で小賢しい3人の上司からいいように使われ、精神的に弱り切っている。
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(※プライバシー保護の観点から、この記事は取材した情報を一部デフォルメしています)

“送別会”においても猿芝居を続ける
口だけ達者なおっさん、おばさん上司

 “乾いた送別会”が始まった。

 「6年間、本当にご苦労さん……」

 専務で開発部担当役員の中村(59歳)の低い声が響く。

 部長の黒石(51歳)と課長の堂本(48歳)は、ワインが入ったグラスを少し持ち上げて、目線を森田に向ける。平均年齢52歳の上司たちに囲まれたテーブル付近には、吐き気がするほど強い加齢臭が漂う。まるで、腐った板チョコレートをフライパンで焼いたような臭いだ。