最大の成果であった
円安・株高に世界経済の逆風

アベノミクスに大逆風、安倍政権に足りないのは何か

 これまでの“アベノミクス”の最大の功績は、異次元の金融緩和策によって円安トレンドを作り出し、株価を押し上げたことだ。それによって、一時期、景気回復への期待が盛り上がった。

 ところが、7月以降の中国経済の急減速やそれに伴う世界的な株価下落で、円安・株高に陰りが出始めている。それに伴い、アベノミクスの功績が少しずつ消え始めている。

 今回の金融市場の混乱は、中国経済の減速懸念の鮮明化により、ヘッジファンドなどが保有する金融資産のリスク量を減らす行為に走り始めたことが原因だ。大手投資家のリスクオフの動きだ。

 そのリスクオフのオペレーションによってわが国の株価も不安定な展開となり、9月4日の日経平均株価は、8月末の高値である2万800円台から約15%も売り込まれることになった。

 また、為替市場ではヘッジファンドや為替ディーラーが、今まで積みあげてきたドル買い・円売りの持ち高の巻き戻しに動いている。そのため、円が買われて強含み、ドルが売られやすく弱含みの展開になっている。

 足元の株式、為替市場の動きは、アベノミクスにとって無視できないマイナス要素として作用するだろう。今後、そうした状況が続くと、経済を活性化してデフレから脱却するという目的を達成することが難しくなる。さらに、アベノミクスに希望を抱いた人々を失望させることにもなりかねない。

 安倍政権発足以降、アベノミクスに好循環をもたらした経済状況は、徐々に厳しい条件を突きつけ始めている。ここから本当の意味で、その真価が問われることになる。