>>(上)より続く

 さらに言えば、ある意味「維新」は明確なビジョンのある政党である。それは大阪都構想であり、統治機構の改革である。「譲れないもの」がはっきりしているということは、それ以外については譲らざるを得ない部分もあることを意味する。そうすると、組むべき相手は必然的に与党である自民党ということになる。「維新」は自民党に協力してほしいし、自民党だって大阪で一定の支持が欲しい。だからこそ、「おおさか維新」派はもうすぐ国会で提出されるであろう内閣不信任案にも賛同できない可能性が高い。これが、一部の人の目には「自民党にすり寄っている」ように見えてしまう。

 橋下徹市長の頭の中には、ひょっとしたら長期的な視点に立った壮大な目的があるかもしれないし、何も考えずに感情的に動いているだけなのかもしれない。こればかりは本人の心の中を覗くしか知りようがないが、経営学的に表現するならば、「維新」の企業価値を高めて売却するなら、民主党に合併されてしまう前に「純化」させてスピンアウトさせた方がよいのは確かだ。

 大阪に集中する、と言いながら国政政党化を示唆するのは、政党交付金などお金に関わる理由もあるだろうが、まさに来年の参院選を見据えた与党自民党に対する牽制であり、バーター取引をしかけるための布石以外の何物でもない。

長期的展望が見えない分党騒動
迷走する維新の戦略に光は見えるか?

 しかしながら、客観的な意見を述べれば、「おおさか維新」構想にはかなり無理があるように思う。W選挙を見据えた短期的なカンフル剤としては意味があるかもしれないが、橋下徹市長は引退を撤回したわけではない。いくら「維新純化路線」を掲げたところで、橋下徹市長がいなくなってしまえば党勢が落ちるのは避けられないことは目に見えている。

 まして、「大阪に集中する」と宣言し、政党名に「おおさか」と入れてしまった瞬間に、国政政党として支持を受けるのは相当難しいということは、素人でも想像がつく。筆者は、日本を関東と関西の二輪で動かしていくという「2つのエンジン」には賛成だし、統治機構の改革にも大いに賛同するが、大阪の改革が日本全国どこでも通用するという安易な考え方には、疑問を抱いている。