入山章栄氏の対談連載「日本のブルー・オーシャン企業」。第1回は「受験サプリ」事業で教育業界に革命を起こしているリクルート マーケティング パートナーズ代表取締役社長 山口文洋氏に話を伺う。大手予備校でトップクラスの人気講師人の授業をオンライン上で月額980円で受け放題というサービスで、現在有料会員は16万人を突破。家庭の経済状況や地理的条件で予備校に通えなかった層を取り込んだブルー・オーシャン・ビジネスはいったいどのように生まれたのか。

受験サプリに繋がる原体験

入山章栄(以下:入山) 受験サプリさんは「月額980円で、ネット上で人気講師の授業が受け放題」というこれまでにないサービスで、学生利用者を急増させて、まさに受験業界に革命を起こされていますよね。

 まずは、山口さんのご経歴について伺ってもいいですか。元々はベンチャー企業で働かれていたんですよね。

山口洋文(以下:山口) 私は入山さんの慶応大学の後輩に当たるのですが、私が卒業した頃は就職氷河期まっただ中で、就活していないんですよ。卒業してからもそのまま3年間フラフラしていました(笑)。表向きには公認会計士を目指していたんですけどね。

980円のオンライン予備校<br />「受験サプリ」を生んだ戦略とは?山口文洋(やまぐち・ふみひろ)
リクルート マーケティング パートナーズ代表取締役社長。ITベンチャー企業にてマーケティング、システム開発を経験。2006年、リクルート入社。進学事業本部で事業戦略・統括を担当したのち、メディアプロデュース統括部に異動。社内の新規事業コンテストでグランプリを獲得し、『受験サプリ』の立ち上げを手掛ける。12年に統括部長に着任し、15年より現職。
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入山 ほんとですか(笑)。

山口 その時に、会計士の予備校に通って、映像授業をたくさん見たんです。

入山 じゃあ、それが「受験サプリ」に辿り着く原体験になっている?

山口 そうなんです。3年間、会計士の勉強をする振りをして、実はずっとフラフラしていたので親に勘当されて、ようやく就職しようと思ったたのが25歳。こんな何も経歴ない僕を拾ってくれたのがとあるベンチャー企業でした。

 そのとき入った会社は、エイジアン・パートナーズという、ERPパッケージという企業業務ソフトウエアの開発から導入までを担う会社でした。高価だったERPを格安なパッケージにして、廉価で世界に売っていこうとしていたんです。

入山 それも「受験サプリ」と、基本発想が似てるじゃないですか。

山口 そうなんです。そこでの経験にも影響は受けていますね。

入山 よく、起業家が事業を思いつくには原体験が重要と言いますが、山口さんもまさにそうなんですね。まさか、元々フラフラされていたとは想像もしませんでしたが(笑)。