商社業界2位の三井物産が変革の岐路に立っている。長らく業績を支えた資源エネルギー事業が価格低迷で落ち込み、機械インフラなど非資源分野の本格的な強化に乗り出した。(「週刊ダイヤモンド」編集部 重石岳史)

「資源一辺倒から本気で脱却するべく、やっと尻に火が付いた印象だ」。ある総合商社幹部がそう評するのが最近の三井物産だ。

 三井物産といえば、金属資源(鉄鉱石・石炭)とエネルギー(石油・ガス)で純利益の8割前後を稼ぐ「一本足打法」が業界の共通認識だった。

 特に1960年代に取得したオーストラリア鉱山の権益を筆頭に、鉄鉱石事業のコスト競争力の高さは総合商社の中で群を抜く。2000年代半ば以降の資源バブルで、その恩恵を存分に受けたが、中国の景気減速で鉄鉱石や石油などの資源価格が急落し、15年3月期の純利益は前期比12.5%減の3065億円に落ち込んだ。

 ライバルの三菱商事も資源で損失を被ったものの、生活産業を中心とする非資源分野が堅調で業界トップの4005億円を維持。「非資源ナンバーワン商社」を掲げる業界3位の伊藤忠商事も2位三井物産に60億円差まで迫り、非資源分野の実力差が如実に表れる結果となった。

 さらに三井物産の16年3月期純利益見通しは2400億円で、3300億円の伊藤忠に抜かれるだけでなく、2300億円の住友商事にも捉えられかねない。

 膨らんだバブルがいずれはじけるのは世の常であり、高騰が続いた資源価格の下落は想定できたはずだ。三井物産も資源エネルギー事業に偏重した収益構造の見直しをかねて課題に掲げてはいたが、「他商社に比べて圧倒的に強い資源権益」(アナリスト)があだとなり、抜本的な体質改善は遅々として進まなかったのだ。

 今春、「32人抜き」で三井物産トップに就任した安永竜夫社長は、こうした現状を打破すべく「非資源事業の強化」を明確に打ち出す。新規事業の6割以上を非資源分野に投じ、16年3月期は純利益2400億円の半分を非資源で稼ぐ計画だ。

 安永体制の最初の3カ月間の指標となる15年4~6月期の純利益は、やはり資源エネルギー事業の落ち込みが足を引っ張り、前年同期比24.2%減の969億円にとどまった。

 その一方で機械インフラ、化学品、生活産業など非資源分野はいずれも増益し、合計の純利益は前年同期から388億円増えて計601億円に達した。4~6月期時点では非資源の稼ぎが資源を上回り、純利益全体の62%を占めるに至った。