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あの人はなぜ、東大卒に勝てるのか
【第7回】 2015年9月24日
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津田 久資

東大卒に勝てる戦場は
「芥川賞芸人」に聞いたほうがいい!?
「あいつ、頭はいいんだけどね…」と言われないために

時代の変わり目には「学ぶ」から「考える」に価値がシフトする。たとえば戦国時代などというのはその典型だ。いかにして相手に勝つか、考えに考えて考え抜いた者だけが生き残る。
豊臣秀吉は朝鮮出兵をした際に、朝鮮の高級官僚を捕虜として連れてきた。科挙を通過した超エリートである彼らは、秀吉の家臣らに謁見した際に、こんな感想を抱いたという。
「こんな学識のない野蛮人どもがのさばり、天下をとっているとは……なんという国だ!」

「考える野蛮人」が跋扈する
知的下剋上の時代が始まった

戦国の世では知識はほとんど役に立たない。もちろん武力があるに越したことはないが、それだけでも生き残れない。「考える力」で勝った者が生き残る。
学力や科挙のヒエラルキーを絶対視していた朝鮮の役人たちからすれば、なぜ学識のない人間が日本を支配できているのかをまったく理解できなかったのである。

下剋上の世というのは、そういうものだ。生まれによって固定されていた身分も、ひとたび戦乱の世に入れば、急速に流動化する。
そこで基準となるのは、徹底した思考に裏打ちされた武力だけであり、逆にそれさえあれば、秀吉のような田舎の下層民でも、天下人にまで成り上がることができるのである。

いまの日本もこれと似たような状況にある。
かつて個人やその家族の一生を決定づけるほどの重みを持っていた学歴 ― その壁は、もはや思考力によって容易に乗り越えられる。いわば知的下剋上の時代だ。

いま「思考力のある人材」が密集する業界とは?

日々、大手企業の社員・幹部に論理思考をレクチャーしている僕も、改めて自分の「考える力の足りなさ」を実感させられる機会が2年ほど前にあった。

その何よりものきっかけは、お笑い芸人の方々と仕事をご一緒する機会が増えたことだ。「ロンドンブーツ1号2号」の田村淳さんがメインコメンテーターを務める情報系テレビ番組にレギュラーコメンテーターとして出演することになった僕は、お笑い芸人の方々の仕事ぶりを間近で見て、心底驚かされたのである。

灘高や東大にいたころ、いわゆる「頭がいい友人」はまわりにたくさんいた。博報堂時代にマッキンゼーの人たちと仕事をしたり、その後ボストン コンサルティング グループ(BCG)で働いたりする中でも、圧倒的な思考力の持ち主たちと仕事をしてきたつもりだった。

しかし、テレビに出ているお笑い芸人の方々というのは、そうした頭脳の持ち主たちと同程度、あるいはそれ以上に、徹底的に物事を考え抜く姿勢を持っている。田村淳さんもそうだが、同じ吉本芸人である小藪千豊さんなども「考える人」の典型である。

ひと回り以上年下の彼らと楽屋で雑談するときですら、僕はこれまでにない緊張感を味わっていた。深く考える習慣をわがものとしている彼らの前に立つと、「下手なことを言えない」という意識が働くからだ。

「芸人=思いつきで気の利いたことを言うだけの仕事」というようなイメージを持っている方も多いと思う。だが、僕の実感では、テレビに出ているお笑い芸人の大半は、かなり優れた思考力を持っている。

ひと昔前であれば、考える力がある人たちは戦略コンサルだとかコピーライターのような業界に集中していた。
しかしいまは事情が違う。いまの日本で最も「考える人材」が密集しているのは、お笑い芸人業界である ― そう断言してしまいたくなるほど、彼らの思考重視の姿勢は際立っている。

最近では、ピースの又吉直樹さんが芥川賞を受賞したが、これは出版社側のさまざまな思惑を差し引いたとしても、さほど不思議なことではない。また、「元芸人」の経歴を持つ人が、ビジネスで成功している事例を、僕はいくつも知っている。

「頭がいい人」の条件が変わった!!

大半の人は、思考力の領域で勝負するほうが賢明だ。それは芸人のような特殊な職種だけでなく、ビジネスパーソン全体に言える。実際、あなたのまわりにも、見事に知的下剋上を果たしている人はいるはずだ。

逆に、高学歴で勉強熱心であるにもかかわらず、仕事面で少なからず問題がある人もいるだろう。ひと昔前なら社内でもてはやされた人材が、いまでは、「あの人、頭はいいんだけどね……」などと影で言われているケースも増えていると聞く。

結局のところ、いまのビジネス環境で生まれる差は、「考えているかどうか」の差だ。
だからこそ、ライバルよりも優位に立ちたいという気持ちがあるのなら、中途半端なお勉強を始めるよりも、考える力を磨いたほうがよほどいいのである。

「東大卒に勝てる戦場」は存在する

こういう話をすると、こんな不安を口にする人がいる。

「そうは言っても、私、考えるの苦手なんですよ」

そんな人は自問してほしい。これまでどおり、知識や学習の領域で勝負を続けたとして、自分にチャンスはあるだろうか、と。

「学ぶ」の戦場にとどまっている限り、その頂点には東大卒のような学歴エリートが必ず立ちはだかっている。もちろん、がんばって勉強すれば、彼らに追いつけるかもしれない。しかし、それには膨大なリソースが必要だし、そこまでして勝利したとしても、世の中はさほどあなたを評価しないだろう。

また、いわゆる学歴エリートである人も考えてみてほしい。いくらあなたの学ぶ力が優れていても、もはやその優位は「考える野蛮人」にいつひっくり返されるかわからない。そうであれば、知識の領域だけで満足せずに、ぜひ考える力を磨いておくべきではないか。

これまでの僕の経験からすれば、いわゆる偏差値の高い大学を出ている人でも、思考力においては凡人と変わらないというケースは少なくない。
ただ、本人が「自分は頭がいい」と思っているせいで、いつまで経ってもそれに気づかないだけだ。
さらには、考える力が本当はあるのにもかかわらず、なまじ勉強での成功体験があるせいで、何か失敗したときでも「勉強不足だった」という思い込みから抜け出せない。実際には「思考不足」であっても、だ。

(第8回に続く)

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津田 久資

1958年生まれ。東京大学法学部およびカリフォルニア大学バークレー校経営大学院(MBA)卒業。博報堂、ボストン コンサルティング グループ、チューリッヒ保険で一貫して新商品開発、ブランディングを含むマーケティング戦略の立案・実行にあたる。 現在、AUGUST-A㈱代表として、各社のコンサルティング業務に従事。 また、アカデミーヒルズや大手企業内の研修において、論理思考・戦略思考の講座を多数担当。表層的なツール解説に終始することなく、ごくシンプルな言葉を使いながら、思考の本質に迫っていく研修スタイルに定評があり、のべ1万人以上の指導実績を持つ。 著書に、就活面接本の超定番書『ロジカル面接術』(WAC)のほか、『世界一わかりやすいロジカルシンキングの授業』(KADOKAWA)、『出来る人ほど情報収集はしないもの!』(WAC)、『超MBA式ロジカル問題解決』などがある。


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