卒業後はK’s・キッチンへ入りたい!

「あ、昌ちゃんおはよう~」
奥から、はるかがいつもの笑顔で顔を出した。
「おう、はるか! はるかの笑顔を見ると、疲れが吹き飛ぶな」
「いやいや! もう~照れる~、昌ちゃんありがと~」
「ははは、ホント、いつもありがとな。あすみは?」
「うん、今ちょっと買い出し。すぐ戻るって」
「どうしたんだ?」
「POPが少し破れていたから新しい紙を買いに行っただけ」
「そっか、了解。奥に座っていていいかな?」
「もちろん。こちらへどうぞ」
はるかはいたずらっぽい笑顔で、昌一郎を奥の小上がりに案内した。

ほどなくして、あすみが大きな袋を下げて買い出しから戻ってきた。ユニフォームに赤いカーディガンといういでたちが妙にかわいらしく、昌一郎は思わずにやけてしまった。
「あ、社長。お疲れ様です」
「おう、戻ったか。じゃあ、早速打ち合わせに入ろう。今日は少し真面目な話だ」

半分にやけ顔だった昌一郎は、即座に雰囲気を切り替えた。そんな昌一郎を見て、あすみもはるかも少し背中に緊張感が走るのを感じた。

「お前たち、来年はもう4年生だろ。卒業後はどうするんだ?」
「え? 私たちK’sに入るつもりで今まで頑張ってきたつもりだよ。就職活動とか一切してないし……」
「そうだよ。昌ちゃん。今さら何言ってんの?」
「う~ん、そうか。あすみはともかく……はるかも本気なのか?」
「当たり前じゃん。っていうか、もう社員になってるくらいの勢いだけど……」
「なるほど~。うーん、ま、そうだよな……」
昌一郎は少し歯切れの悪いそぶりを見せた。
「え? 何で? ダメなの? そう言えばまだミッション残ってるよね? 全部終わった時点で昌ちゃんが就職OKかどうか決めてくれるんじゃないの?」
「いやいや、そうなんだが……ホントにそれでいいのか? はるか。お父さんとお母さんはどう言ってるんだ? もう話してあるのか?」
「もちろん、ちゃんと話してあるよ。この前も、合格したら昌ちゃんに挨拶に行かなきゃって言ってたよ」
「そうなのか(苦笑)。家族全員が本気で考えてくれているってことだな。うん、分かった。まぁホントにうちに就職決まったらこっちから挨拶に行くが……ま、それは置いといて……。お前たち2人とも本当に、本気でうちに来る気があるってことでいいんだな?」
「もちろん。これまで一生懸命頑張ってきたんだもん。他に考えられないよね」
「そうだよ。マジ意味不明。今さらそんなこと言うなら、私の青春返せって感じ!」
あすみとはるかは、当然! といった表情で昌一郎の目を見た。その眼はキラキラと輝き、まるで幼女が夢を語るかのような真っ直ぐさを秘めていた。