「還付方式」は消費税の欠陥を隠蔽する苦し紛れの奇策このままでは消費者のみならず事業者の側にもさまざまな問題が発生する

 消費税の軽減課税に関して、財務省が「還付方式」を提案した。

 この仕組みは、一見したところ、(実行コストの問題を抜きにすれば)日本の特殊事情に合わせた現実的な軽減税率方式のように見える。

 しかし、詳しく見ると、さまざまな問題がある。導入すれば、将来に大きな禍根を残すだろう。以下では、いかなる問題があるかを指摘しよう。

 なお、与党は、店頭での軽減課税についても並行して検討するとしている。また、対象品目をどうするかという問題もあるが、ここではこの問題は扱わず、還付方式の問題点のみについて論じることとする。

導入と維持に多大なコスト
その一方で効果は疑問

 この仕組みでは、消費者の購入情報を「個人番号カード」に搭載されているICチップに記録し、店頭レジの端末から「軽減ポイント蓄積センター」にオンラインで送って蓄積する。その情報を用いて還付を行なうのである。

 このため、読み取り端末を全国津々浦々の零細商店に至るまで設置しなければならず、構築にコストがかかる。徴税のための仕組みだから、費用は国費で賄わざるをえないだろう。

 通信回線も大規模店などでは問題ないが、零細商店では、オンライン接続のために新たな工事が必要だ。しかも、それを維持し、故障等に対処する必要がある。食品販売店には高齢者が経営する零細商店も多いが、高齢者がこのような情報機器を操作し維持するのは、かなりの負担だ。

 また、消費者も、個人番号カードを常時携帯し、還付申請手続きをしなければならない。

 しかも、限度額である年間4000円以上の還付はなされないので、その部分については、結果的には無駄な手続きをすることになる。