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山崎元のマネー経済の歩き方

従業員持ち株制度の弊害

山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]
【第100回】 2009年10月26日
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 「日本経済新聞」(10月5日付夕刊)の1面トップに、従業員持ち株制度で信託の活用が広がっているという記事が載った。信託を使うことで株式の取得資金を借り入れることが可能になり、「株価が下落したときに機動的に株式を取得できる」ことがメリットだという。

 しかし、「機動的に買う」というが、株価が以前よりも下落したことはわかるとしても、どのタイミングで買うのが投資として有利なのかを判断することは難しい。運用会社が行なう運用の説明にあっても「機動的に」は要注意の怪しい言い回しである。

 また、株価が下落したときに自社株を買うことが可能になると、持ち株会が企業自身による株価対策に利用される可能性がある。もともと自社株買いはできるわけだが、取得した自社株を再放出するのではないかという懸念を持たれる場合があった。それが、信託を使った持ち株会が受け皿になると「株価の下支え効果にもつながりそうだ」と日経の記事は結ばれている。この制度を導入したある企業も「持ち株会の活性化と安定株主づくり」が目的だという。

 安定株主づくりが目的となると、たとえば、企業が買収のオファーを受けて経営者がこれに反対する場合は、持ち株会の株式は相手に売らないことになるのだろうか。また、取締役再任の議案や役員の報酬・退職金といった経営陣が最も気にする議案についても、会社提案に対して常に賛成票を投じることになるのだろうか。必ずではないにしても、そうなる可能性が大きいと見ていいだろう。

 だとすると、買収には反対の立場に立ちやすい従業員にとってはいいとしても、一般投資家株主としては、従業員持ち株会の保有が大きな会社については、買収されにくいから買収提案による株価の上昇が期待しにくいし、経営者に対する株主のガバナンスがききにくいという見方ができる。

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山崎 元 [経済評論家・楽天証券経済研究所客員研究員]

58年北海道生まれ。81年東京大学経済学部卒。三菱商事、野村投信、住友信託銀行、メリルリンチ証券、山一證券、UFJ総研など12社を経て、現在、楽天証券経済研究所客員研究員、マイベンチマーク代表取締役。


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12社を渡り歩いた資産運用の現場に一貫して携わってきた視点から、「資産運用」の方法をどう考えるべきか懇切丁寧に説く。投資家にもわかりやすい投資の考え方を伝授。

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