少子高齢化により、生産年齢人口の減少が見込まれる日本社会。企業でも若手社員の割合が減る一方、シニア社員の割合が増加しそうだ。そんな兆候がすでに出始めているためか、最近世間の若手社員からは、「働かないおじさんが以前よりも増えて、自分の仕事がきつくなった気がする」という悲鳴が聞かれる。社員の高齢化に伴い、今後こうした人々は本当に増えていくのか。そうだとしたら、企業は彼らをどのように再教育・活用すればいいのか。働かないおじさんが跋扈し仕事がマヒする「限界集落職場」の課題を考える。(取材・文/朽木誠一郎、編集協力/プレスラボ)

働かないおじさんが急増?
「限界集落職場」が増える予感

働かないおじさんがウヨウヨ?<br />「限界集落職場」は急増するか多くの高齢社員を少ない若手社員が支える職場の到来に備えて、働かないシニアの意識を変えて行く必要性は大きい

 少子化高齢化は喫緊の課題である。平成24年の内閣府の調査によると、日本はこれから長期の人口減少過程に入る。2026年に総人口1億2000万人を割り込み、2048年に総人口1億人を下回る9913万人に。さらに2060年には、総人口8674万人になると推計されている。

 一方、高齢者人口(65歳以上の人口)は2042年まで増加の一途をたどり、3878万人でピークを迎え、その後は減少に転じる予測だ。高齢化率(総人口に占める高齢者の割合)は2035年に3人に1人、2060年には約2.5人に1人という社会が到来する。

 このような少子高齢化による社会への影響は、しばしば企業の経営戦略の観点で語られるが、人事戦略についてはどうだろうか。総務省が発表している年齢階級別就業者数によれば、2015年7月現在で、全就業者数5644万人中25~34歳が1120万人、35~44歳が1501万人、45~54歳が1399万人。総人口の推移と併せれば、向こう20年で全就業者数に占める中高年の割合はますます大きくなり、若手では小さくなることが容易に想像できる。

 そんな兆候がすでに出始めているためか、最近企業で表面化しつつあるのが、中高年層が多い職場における諸問題だ。とりわけ若手社員が指摘するのがは、「働かないおじさんが以前より増えているのではないか」ということだ。

 総合商社に勤務する30代の中堅社員・Aさんは、50代の「働かない上司」に悩んでいる。「動かない上司を動かして出した結果が、上司がチームを動かしたことになり、上司の手柄になる」とその理不尽さを語る。もともと「歯医者」を理由に遅刻・欠勤を繰り返すその上司との間では、「直行直帰で終日不在にしている日もあり、本当に仕事をしているのかと疑ってしまいます」と、信頼関係はもはや成立していない。会社自体も停滞ムードが漂う中で、個人としても成長意欲がかき立てられない職場にいるフラストレーションは大きい。「そもそも、団塊世代の人余りで中高年に与えられる仕事が少ない」(Aさん)という状況に愛想を尽かしつつあるAさんは、いずれ会社を飛び出すことも視野に入れている。