根拠なき自信家が持つ失敗許容力とは

 なぜシリコンバレーには「根拠なき自信家」が多いのか、その理由を探るために、シリコンバレーに在住のコンサルタントであるセニア・マイミンさんに話を聴きました。

 セニアさんは、ハーバード大学で数学と経済学の学士をダブル取得し、ウォールストリートの金融機関で勤務した後、スタンフォード大学大学院でMBA(経営学修士)と組織行動の博士号を取得、ペンシルベニア大学では応用ポジティブ心理学修士課程を修了し、現在はグーグル、IBM、インテルなどの企業を相手にコンサルティングとエグゼクティブ・コーチングを行なっています。

 最近では、著名企業の事例を含めた、従業員のエンゲージメントとリーダー層のレジリエンスを高める31の技法をまとめた本『ポジティブ リーダーシップ』(草思社)を共著し、アマゾンのビジネス書部門でベストセラーになるほどの高い評価を得ています。

 自身がシリコンバレー在住の起業家でもあり、心理学の知識も豊富なセニアさんであれば、「根拠なき自信」を持つ人材の特徴を教えてくれると、私は期待したのです。

 セニアさんからは、次のような興味深い意見を聞くことができました。

「私は、根拠なき自信の強い人材は、失敗を恐れずにチャレンジし続けることができる『失敗許容力(Failure Tolerance)』があると考えます。そして、失敗を受け入れることができる社内文化がないと、イノベーションを生み出すような組織はつくれないとも考えています」

 失敗許容力とは、「自分の失敗をしなやかに捉え、受け入れる能力」を示します。自分の周りで起きた出来事を現実的に認識し、柔軟に解釈し、合理的に考えることができる人がもつ心理的資源です。

 失敗許容力のある人は、柔軟な自信を内面に持っています。失敗により落ち込むことはあっても、心が折れることなく、すぐに立ち直ることができるのです。

 失敗許容力のある人は、通常の人と心の持ち方が少しだけ違います。物事をより柔軟に捉えることができるのです。

 たとえば、失敗を許容する器の持ち主は、「世の中の事象には二面性がある」と考えているようです。失敗をすることは、誰にとっても辛く苦しいものです。

 ただ、失敗と思える出来事を別の側面から見ると、そこには自分が見逃していた改善の機会が隠されていることがあります。

 永遠に続くように思える悪い出来事も、冷静な目で見ると、あくまで一時的なものであり、誠実に対応すれば長期的にはチャンスにもなることが見えてきます。